『シャオミのすべて』著者インタビュー③

巨大IoTメーカーから見た“メイド イン ジャパン”

第3回 日本企業よ、中国市場を目指せ!

『シャオミのすべて』と著者の洪華(ホン・ホワ)氏

日本の家電はユーザーを見ているか

——中国の製造業をよく知る洪華先生から見る日本製品のイメージは? 

洪:今回の滞在中もいろんなお店を回りましたが、やはり隅々まで細かく作り込まれているというのが印象的でした。例えば、綿棒一つ取っても丈夫ですし、軍手にまでデザインのセンスが感じられて滑り止めにもこだわりがある。日本のそういう職人精神というか、細部まで徹底している点には本当に感心します。

——確かにものづくりへのこだわりは、日本人が自負しているところでもあります。

洪:私は日本製品、特に90年代の家電を尊敬しています。当時のソニーなど大手メーカーの製品を分解して細部まで研究しました。

 しかしここ数年の家電についていえば、少し質が落ちているように感じています。日本の職人精神が衰退してきているのでしょうか。もちろん、多くの分野で日本はまだ優位に立っていますが、率直に言えば、今、私たちの学ぶべきものは現在の製品ではなく過去の製品にあります。

 職人精神は諸刃の剣でもあります。一部の職人はあまりにも個人のこだわりを追求して、ユーザーのことを無視していませんか。

 例えば、一部のテレビ開発者は解像度の研究に没頭し、肉眼では分からないレベルまで到達しても、さらに研究を重ねます。結果、庶民の手が届かないほど販売価格が高くなります。

 一般ユーザーの気が付かないほど品質を高めても自己満足にすぎません。まさに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。私たちはユーザーに対する謙虚さを忘れずに職人精神を学びたいと思います。

シャオミの最新スマホ「Mi9」とスマートバンド「Mi band4」(Shutterstock)

——日本のIoT市場についてはどう思われますか?

洪:正直に言うと、20年前は日本の家電を買っていましたが、ここ数年はそれも少なくなりました。シャオミなど中国製品が使いやすくなったからかもしれません。私自身が一消費者としての感覚でいったら、日本はIoT領域での発展が比較的遅いですね。

 昔からソニー製品を見ていますが、IoT領域ではスマートスピーカーぐらいでしょうか。日本のIoT業界といっても製品が少な過ぎてあまりイメージできないのです。この分野での日中両国の状況を見ていると、既に持っている優位性が時にはさらなる発展の障害になったり、逆に劣性が時にはイノベーションの原動力となるのだなと思います。

日本企業をサポートしたい

——このような日本市場にシャオミとミー・エコシステムが進出する可能性はありますか?

洪:シャオミ本体とエコシステム企業の戦略については担当部署が決めることで、私にはちょっと分かりません。

 私の谷倉創業学院についていえば、エコシステム企業としてシャオミのノウハウを活用し、グループ外の起業もサポートすることを事業としているので、日本の企業や起業家の方ともぜひ一緒にビジネスを成功させてみたいと思っています。

 実例をご紹介すると、最初にインキュベート(孵化)させた企業は歯ブラシメーカーで、東レからの素材供給を受けることで成功しました。その次は電気シェーバーメーカーで、マクセルの素材供給を受けるために会社を何度も訪問しました。最初は、マクセル側も「どうやって年間10万台のシェーバーを売るのか? ウソじゃないのか?」と疑っていたそうです。日本の経験ベースでは、私たちの巨大な販売量を信じられなかったのです。後に私たちが年間70万台も売り上げた時、彼らは非常に驚いていましたが、これが大きな信用となり、工場を拡大したそうです。

——逆に日本のメーカーが中国進出するとしたらオススメしたいポイントは何ですか?

洪:今回の来日目的は生活用品を扱う会社との商談でしたが、日本は何気ない日用雑貨でも種類が多く品質も良いですね。さらに日常のさまざまなシーンを想定した商品が多くある。このような日本の良いブランド、良い素材を何らかの形で中国マーケットに持っていけないか、これが今まさに私たちが力を入れていることです。

 その理由は、中国マーケットの2つの特徴にあります。1つは約14億人の巨大な購買力。もう1つはまさに今、歴史的なターニングポイントにあるということ。生活は粗末なものからきらびやかに変わった。貧しさから豊かさへの転換過程に無数の商品とサービスの機会があります。しかもこれは今後5〜10年でさらにグレードアップします。日本のエレガントで華やかな生活スタイルを、ローカライズするだけでまたとない大きなチャンスをつかむことができるでしょう。

 私が手掛けたプロジェクトは成功事例ばかりですので、きっと信用してもらえると思います。少なくともこれまでの協力企業とはWIN-WINでした。私たちと一度腹を割って話をしてみたい企業があれば大歓迎ですよ。

——特に信用面で、中国企業に対して時代遅れの認識を持っている日本企業も少なくないと思います。

洪:日中両国の国民は多くの面で類似性があり、ライフスタイルにも共通する部分があります。中国とアメリカとの関係よりもはるかに近いのに、お互いに知らないところが多い。中国の企業経営者は日本にやってこないし、日本の起業家も怖がって中国に行きたがらない。

 「混乱している怖いところだ」という漠然としたイメージで中国を敬遠する人がいますよね。ですが、混乱しているからこそチャンスも多いのです。もし中国がもう少し秩序良く発展していたら、こんなにチャンスはなかったはず。アメリカのカウボーイは西部の荒野を開拓しましたよね。荒野だから開拓のチャンスがあったわけです。

 ちなみに中国沿岸部は非常に発達しており怖いことはありません。浙江省や江蘇省、上海、広州、北京などの地域は、日本と同じように相手を信用して商談ができます。

若者が多く立ち寄り活気のあるシャオミの「ミーストア」(Shutterstock)

成功するには失敗に学べ

——起業で成功するための鉄則というのはあるのでしょうか。

洪:成功を研究するにはまず失敗を知らなければなりません。つまり、1つの会社はどのように死んだのか? 最も致命的だったのは何か? 失敗を研究できたら解決策を考え処方します。

 人間にガンや心臓病など三大死因があるように、起業にも四大死因があります。最も大きいのは「方向の選択ミス」です。もし選んだ方向、つまり「製品の定義」がそもそも間違っていたら、マーケットに受け入れられるわけがありません。

 その次に大きいのが、販売ルートがないこと。言うまでもなく商品があっても売れるわけがない。3番目はサプライチェーンがよくないこと。販売ルートを整えても高品質な供給元がないと良い製品ができません。4番目は十分な資金がないことです。

 この四大死因の対策として、私たちは「逆行インキュベーション」という提案をしています。つまり4つの問題を先に解決するということ。

 具体的には、最初に商品の方向を正しく定めてからチームを組む。次に、販売ルートを決めてから商品を作るということです。

 例えば、リュックを売る場合を考えてみましょう。リュックの売れる時期といえば中国では新学年が始まる9月1日の半月前です。ですから、全ての販売ルートに8月15日から9月1日の間に自分たちのリュックが最も目立つ場所に置いてもらえるよう約束を取り付けてから商品を作るのです。商品を作り上げてから販売ルートを探すのではありませんよ。さもないと在庫が自らの首を絞めることになりかねません。

 3つ目の問題に対しては、サプライチェーンを整えてから商品案を作ることです。例えば、シェーバーを作りたい場合、まず刃などコアパーツの問題を解決しなければなりません。最後に、資金はどこから入手するのか、どのくらいの金額が必要なのか、事業拡大に従って増える資金はどうするか? 全部最初から計算し準備させます。

 この「逆行インキュベーションモデル」で私たちは大幅に起業成功率を向上させました。100%とは保証できませんが、元々3%の成功率を30〜50%までは引き上げられます。これは私たちが100社以上もサポートした中で模索し見いだした方法なのです。

——中国でビジネスをするにはどうすればいいのか分からないという若者や企業に何か意見はありますか?

洪:面白いことに、日本と中国の企業家の年齢差は約20歳あります。日本に来て商談をすると私たちは40歳前後で相手はだいたい60歳前後です。

 中国では、若者が階級を飛び越えることはよくあります。日本の若者に呼び掛けたいのは、日本の社会システムの中では一歩一歩登っていかなければなりませんが、中国ならジャンプで一気に登ることができるということ。ですから冒険精神を持ってもらいたいものです。中国というマーケットは冒険する価値がある場所ですよ!

 確かに知らない土地での起業には困難がつきものです。だから早い段階で頼れるパートナーを見つけることが重要です。私たちなら先ほどの4つの逆行インキュベーションのように、まず商品の方向性を一緒に決めて、販売ルートは小米有品(シャオミのECセレクトショップ)やワトソンズ(アジア最大級のドラッグストアチェーン)などを提供します。さらに良いサプライチェーンを整え、資金も提供します。

 全ての要件を完備しているので、家具家電付きの物件に身一つで入居するようなものです。志のある人なら誰でも大歓迎です。特に日本の起業チームをサポートした例はまだ少ないので、試験的に1〜2チーム選び、成功したら規模を大きくしていくプロジェクトをやってみたいと思っています。


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次回 あとがき 『シャオミのすべて』に込めた思い

インタビュー:郭ウテイ(中信出版日本) 構成:高橋峰之(中信出版日本)

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