フードテックの波に乗り、ついにブーム到来か——中国「人工肉」ビジネス

 健康志向や動物愛護への関心が高まる中、食品とITの融合で技術的イノベーションが急速に進み、「人工肉」市場が活気づいている。スタートアップ企業も含めて世界のミートテック業界では事業の本格化が相次ぎ、関連企業の株価も急騰、消費市場での受け入れもグローバルに広がっている。

【スタートアップ】新しく設立されたベンチャーのこと。新しく設立された会社のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社のこと。ベンチャー。(Wikipediaより)

おさえておきたいポイント

人工肉の主な種類
植物由来肉(代替肉、プラントベースフード)
大豆やエンドウ豆など植物由来の素材を使用。
培養肉(クリーンミート)
動物の個体からではなく、動物から採取した細胞を試験管の中で培養する。

人工肉のメリット・デメリット
メリット
・飼料や水、広大な土地などを必要とせず、環境負荷が非常に小さい。
・畜産全体から排出されるメタンガス発生量を抑えて温室効果ガスを削減できる。
・狂牛病、鳥インフルエンザ、豚コレラなど家畜の病気リスクが少ない。
・生育環境を管理できるので個体差がない。
・肉そのものの栄養素を変えることができるので健康増進につながる。
・将来的な食糧危機の解決策となる。
デメリット
・通常の肉よりも割高。
・遺伝子組換え原料の混入などによる想定できない健康被害のリスクがあるという専門家もいる。
・発がん性のリスクがあるという専門家もいる。
・「培養」や「遺伝子組換え技術」などに一部消費者の心理的抵抗がある。
・思想や信条により食べられないケースがある。
(肉食が禁じられる宗教や菜食主義者が細胞培養による人工肉を食してよいのかという問題は今も議論が交わされている)

世界の動向
欧米
 人工肉の生成方法がより簡単になりコストダウンが徐々に実現。これを受けて、大手ファストフードチェーンが相次いで人工肉バーガーの試験販売を開始し市場は急拡大。例えば、米マクドナルドでは今年9月末、カナダの一部店舗で「P.L.T」の試験販売を実施。パティ納入業者はフードテックのスタートアップ企業、ビヨンド・ミートだ。同社はビル・ゲイツ氏やレオナルド・ディカプリオ氏など著名人も出資していることで知られる。米ケンタッキーフライドチキンやダンキンドーナツも同社の人工肉でメニューを拡充中だ。

シリコンバレーのベンチャー企業インポッショブル・フーズの人工肉パティを用いたバーガーキング「インポッシブルワッパー」(米BurgerKing公式HPより)
商品名「P.L.T」はプラント(植物)、レタス、トマトの頭文字を取って命名された。価格は6.49カナダドル(約530円)。(米McDonald’s公式HPより)

 ヨーロッパにおいて人工肉の歴史は古く、イギリス生まれのクォーン(Quorn)は1960年に開発がスタート、1985年に商品化された。人工肉ブーム到来で再び脚光を浴びた形だ。英大手スーパーマーケットのセインズベリーズやテスコでは、数年前からヴィーガン用に人工肉惣菜を販売するなど、欧州での人工肉普及率は日本よりも高い。

2018年発売、テスコのヴィーガン用総菜シリーズ「Wicked Kitchen」。(テスコ公式HPより)

日本
 2017年、スタートアップ企業のインテグリカルチャーが人工鶏フォアグラの試作に成功。今年3月には、日清食品ホールディングス株式会社と東京大学生産技術研究所所属の竹内昌治教授の研究グループが世界で初めてサイコロステーキ肉の培養に成功した。また、三井物産はビヨンド・ミートに出資、その恩恵を受けている(比率は未公表)。欧米とは食文化が異なるため日本での人工肉文化の浸透は速いとは言えないが、東京五輪を控えベジタリアン対応が急がれる。

中国
 人工肉製造企業の台頭が目覚ましく関連株価も順調だ。今年9月には、中秋節に合わせて、人工肉月餅を発売し話題に。しかし、人工肉の管理監督体制は確立されておらず、中国植物性食品産業連盟は関連政策や基準の早期策定と人工肉監督管理体制の強化を求めている。

人工肉を使った月餅(左上)(珍肉サイト https://zhenmeat.com/)

金華ハムメーカー、中国初の人工肉販売開始で連続ストップ高

 人工肉関連株がついに中国A株に登場した。金字火腿有限公司(以下「金字ハム」)が国内初となる植物由来代替肉を発売、10月11日からアリババが運営するECサイト「天猫旗艦店(Tmall公式店舗)で先行予約販売を開始したところ、同日の同社株価はストップ高を記録したと浙江省の地元紙「銭江晩報」が伝えた。

【中国A株】人民元建てで取引が行われる中国A株市場に上場した株で、中国国内投資家しか売買できない。正式名称は「人民元普通株券」。ちなみにB株は外貨建てで取引が行われ、外国人も売買できるが、取引規模はA株よりもかなり小さい。
牛肉風味パティは1箱220gで2個入り、賞味期限は100日。オンライン先行予約販売は2箱4個入りで、価格は176元。(天猫公式HPより)

 同社のページでは、同社商品の質感や味は牛肉さながらで、Non-GMO(非遺伝子組み換え)大豆などの植物性タンパク質を原料とし、パティ100 gあたりのタンパク質含有量は11.7 gと紹介。同商品は米化学メーカーデュポン(Du Pont)との業務提携により製造され、植物由来の代替肉はアジア人により適しているとアピールしている。

 9月20日、同社の人工肉が販売間近だというネットの噂の真実を確かめるべく、深セン証券取引所の交流プラットフォーム「互動易(Easy IR)」で直接同社に真偽を問う投資家がいた。同社は、人工肉の分野に注目してきたこと、関連商品を研究開発中であること、開発は順調であることを認めたうえで、詳細は社の正式発表を待ってほしいと回答。その後、金字ブランドの人工肉は登録や生産許可審査を終えて生産を開始した、と10月10日、互動易で発表された。

淘宝造物節ポスター(百度図片より)

 クリエイターの祭典「淘宝造物節(Taobao Maker Festival)」 、今年は9月に杭州で開催され、人工肉は大きな人気を博した。植物由来の食品を中心に持続可能なエコライフを推進する香港のスタートアップ企業「Green Monday」が植物由来肉でできた「獅子頭」や「ビーフタコス」など斬新な商品を出品、本物の肉とほぼ遜色ない食感をアピールした。イベント期間中、Green Mondayのブース前には長蛇の列ができていた。

【獅子頭】こぶし大の肉団子

 料理ビヨンド・ミートがナスダックに上場したのは今年5月2日のことである。初日株価が163%も高騰し、新規株式公開(IPO)後の取引初日としては2008年世界金融危機以来の最高記録となった。同時に世界中で人工肉旋風が巻き起こり、5月中旬には中国国内でも関連株が軒並み大幅に上昇。上場から5か月ほどが経過し、ビヨンド・ミート株価は6倍に上昇、ミートテックのリーディングカンパニーとしての座を確固たるものにしただけでなく、ベジタリアン食を主軸とする既存企業の株価や投資の方向性にも影響を与え始めた。その後、多くのA株上場企業が人工肉分野への参入を表明し、その大半は植物性タンパク質を抽出する人工肉製造技術を採用している。


 英バークレイズ銀行の今年5月の推計によると、今後10年間で人工肉の食肉市場でのシェアは10%程度を占め、その規模は1400億米ドルに達する見込みだという。また、中国植物性食品産業連盟が今年9月に開催した座談会で、業界関係者は世界の人工肉市場規模が2019年に120億米ドル、2025年には280億米ドルに達すると予測した。

 中国は伝統的に肉の代替品を食する習慣があることから、人工肉への抵抗は比較的少ないという見方がある。消費者の74%は人工肉を受け入れられるという調査結果もあり、これは世界で最も高い割合だったという。

 目下、超有望とされる人工肉市場、その勢いは米国だけに留まらない。中国や日本などアジア諸国でも欧米と同じように普及していくだろうか。そして、我々の食卓にも当たり前のように人工肉が出される日はいつになるのか、気になるところである。

<参考サイト>
http://baijiahao.baidu.com/s?id=1647176993752278412&wfr=spider&for=pc
http://finance.sina.com.cn/chanjing/cyxw/2019-09-29/doc-iicezzrq9162598.shtml
http://www.jinzichina.com/

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