「蟹」——食への情熱が生んだ逸品たち

 中国で秋の味覚といえば、真っ先に上がるのが「上海蟹」だ。毎年この時期に必ず蟹を食べるという中国人は少なくない。

 2700年にも及ぶ中国の蟹文化は、様々な言い伝えとこだわりを生み出した。
とりわけ、どんな種類の蟹であろうと隅々まで食べ尽くすことへのこだわりが強く、箸やつまようじなどを使い、身をできるだけ綺麗に取り出して食べるのが、中国での一般的な食べ方だ。

 カニ料理を提供する比較的高級なレストランに行くと、妙な小箱を持ち込んでいる人を見かけることがある。たいていの場合その中には「蟹八件(シエ・バージェン)」というものが入っている。

※写真は以下のリンク(Baidu百科)参照
https://baike.baidu.com/item/%E8%9F%B9%E5%85%AB%E4%BB%B6

 古代では、蟹を食することは、朝廷の官吏や文人墨客たちが交流の場で行う雅やかな行事として扱われていた。そのおもしろ味と風雅を増すために、様々な道具が発明された。明朝時代には蟹を綺麗に食べるためのアイテムセット「蟹八件」が確立し、今日にまで受け継がれている。

「蟹八件」はその名通り、8つの道具で構成される。

 使用順に紹介すると、最初に使うのは丸い形をしたハンマー「腰円槌」。まずはそのハンマーで蟹の甲羅を繰り返し叩いて割り、開けやすくする。
次に「長柄斧」というヘラ状の道具で甲羅とふんどしを外す。
それからサソリ(「镊子」)を使ってガニなどの食べられない部分を取り除き、カニスプーン(「長柄匙」)で卵を食べ、先端がフォーク状になっている「簽子」で身を取り出す。
その他には、蟹専用のハサミ「剪刀」、甲羅を乗せる小さなお皿「」と、槌の下敷きとして使える「剔凳」がある。

 あると無いとでは食べ方の手間が全く異なり、この「蟹八件」はまさに、手やテーブルを汚すことなく優雅に蟹を食べられるように発明された独特な食道具なのだ。


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