アリババ、香港IPO大型上場で再上陸

 今年になってアリババが香港証券取引所(HKEx)への上場を申請し、今月13日に承認されたと複数のメディアが伝えていた。そして今月15日、同グループは香港証取所への株式上場を正式に発表。順調に進めば取引開始日は11月26日で、最大134億ドル(約1兆4600億円)の調達を目指すという。

 ソフトバンクグループはアリババの筆頭株主だ。11月6日に発表した2019年7~9月期連結決算は最終損益が7001億円の赤字に急落した。孫正義氏自ら「真っ赤っかの大赤字」と語ったとおり同期利益の落ち込みは大きい。今回の報道を受けてソフトバンクグループへの恩恵も期待されるところだ。

過去の経緯

 アリババは2007年11月に一度アリババ・ドットコム株として香港証券取引所のメインボードに上場した過去がある。その後、自社サイト内での不正取引が発覚。経営転換の必要性を感じていたアリババは外部投資家からの雑音を回避するため、上場から5年後の2012年自主的に上場廃止を申請し、アリババグループによるTOB(株式公開買付け)によって香港市場から撤退していた。

 2013年、再び香港での株式再上場を目指すも、ジャック・マー会長(当時)ら経営陣が会社を支配するアリババのガバナンス体制を香港の規制当局が問題視し、上場は認められなかった。

【アリババのガバナンス体制】
アリババが採用している「パートナー制度」は、「普通株式」と「複数議決権株式」が共存する株式の二重構造が取られている。同社は少数の経営陣株主に取締役の任命権など特殊な権利が付与されるこの仕組みを認めるよう香港規制当局に求めていたが、株主の公平な権利が最優先であるとして規制当局は当時この要求を受け入れなかった。当時、アリババの筆頭株主はソフトバンクが約37%、米ヤフーが24%を保有し、ジャック・マー会長(当時)を含む経営陣は1割強にとどまっていた。

 その後アリババは上場先をアメリカに切り替える。2014年、ニューヨーク証券取引所(NYSE)での上場に踏み切った。当時約2兆円の資金を調達し、時価総額は上場初日から20兆円を突破するなど「史上最大のIPO」と騒がれた。

【IPO】上場した企業が最初に売る株式(新規公開株)のこと。Intial Public Offering(最初の公開の売り物)の略。
アリババ上場時のニューヨーク証券取引所(Shutterstock)

そして今回、香港撤退から5年以上の時が過ぎ、アリババが香港証取所に戻ってくる。

上場規模は今年の世界最大級

 アリババの発表によると、今回はHKExメインボードでの取引で、普通株5億株を公開予定、そのうち全体の2.5%にあたる1250万株が個人投資家向けで、IPO価格は最大188香港ドル。今回のアリババの公開株式数は、前回と比べて2倍近くの増となる。

【メインボード】
香港株式市場の2種類ある市場の一つ。新興企業向けの「GEM市場」とこの「メインボード」に分けられ、メインボードでは中国資本の香港企業である「レッドチップ銘柄」と、中国資本の中国企業である「H株」などが取引されている。(参考:みずほ証券HPよりhttps://www.mizuhosc.com/product/stock/gaikoku_kabu/china/about.html)

 なお、個人投資家向け公開株式数については、公募株数の調整ルールにより1250万株から全体の10%となる5000万株まで引き上げる可能性がある。海外向けのIPO価格は、ブックビルディング(株式の募集又は売出しの際の価格設定に用いられる発行条件の決定のための需要予測)を経て今月20日に決まる予定だ。
なお、オーバーアロットメントによる売出し(ブックビルディング期間に需要が大きいと分かった場合に、証券会社が株主から株を借り、その株を追加して投資家に販売すること)の場合は7500万株が追加される可能性がある。

 ニューヨーク証券取引所とは重複上場する。株式分割に伴い普通株と米国預託証券(ADR)との交換比率を1ADRあたり普通株式1株から8株に変更、つまり普通株を8倍に増やす。新株発行で資本調達の柔軟性をさらに高める計画だ。

普段のニューヨーク証券取引所(Pixabay)

香港上場基準緩和

 2018年4月、HKExが制定した「新興及び革新産業の企業の上場制度に関するコンサルティングの総括」が正式に発効した。HKExがメインボードの上場規則を改定し、種類株式を発行する企業の上場を認めるようになったのだ。これによりアリババの香港上場の最大の障害は取り除かれた。その後、アリババ香港再上場の噂が絶えず囁かれてきた。

 同月、HKExのCEOであるチャールズ・リー(李小加)氏は、雑誌「財経」のインタビューに応じ、「アリババの再上場は遅かれ早かれ100%実現すること。それが香港市場なのか上海市場なのかはアリババ自身が決めること」とコメントした。その後の展開は大変スピード感があったと言えよう。

また、今回アリババは目論見書で最新の持ち株比率を開示した。それによると、ソフトバンクが25.8%、ジャック・マー(馬雲)氏6.1%、ジョセフ・ツァイ(蔡崇信)氏2.0%、その他経営幹部0.9%、一般株主は65.2%となる。かつて香港市場上場の足かせとなったパートナーシップ制度も、目論見書において情報開示されている。現在のパートナー数は38人だ。

【ジョセフ・ツァイ(蔡崇信)氏】
「アリババ18羅漢」と呼ばれる創業メンバーのうちの9番目の加入者で、ジャック・マー氏の右腕と言われていた。今年6月戦略的投資部門のトップから退くことを発表。8月にはNBA(米プロバスケットボール協会)のブルックリン・ネッツを約2500億円で買収、米スポーツチームで過去最高額の買収規模として話題を集めた。
香港株式市場への再上場を伝えたニュース

景気後退入りでも、香港の「未来は明るい」

 米中貿易戦争が最近は貿易以外の分野にまで拡大している。米政府が中国企業の資金調達を制限する目的で米株式市場における中国株の上場廃止を検討中という観測もあり、アリババはいざという時のために他市場でも上場しておいたのではという見方がある。

 ジャック・マー氏の後継者で、現在のアリババCEOであるダニエル・チャン(張勇)氏は、香港では民主化を求める抗議活動が激化し、経済が景気後退(リセッション)入りしたにも関わらず、香港の「未来は明るい」との認識を示している。

 香港が国際金融センターとしての機能を今後も維持できるか、投資家の間では不安が高まっているが、今回のアリババ上場に今、香港市場は色めき立っている。ソフトバンクの動向と合わせて今後も注目していきたいところだ。

<参考サイト>
https://www.toutiao.com/a6759445095646233102/
https://www.scmp.com/business/banking-finance/article/3037771/alibaba-sell-shares-no-more-hk188-share-its-hong-kong
https://alibabagroup.com/cn/news/article?news=p191115

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