意外と知らない中国の魚料理(前編)

 国土が広いため、日本以上に地域によって食べる食材が大きく違う中国。その中で、東西南北問わず愛される魚は、多くの地域で名物料理に使われる食材だ。種類と調理法により多彩な味わいがあり、日本で食べられている魚とは全く違うものが多い。今回は、有名魚料理とその発祥地を前編・後編に分けて紹介しよう。

水煮魚(スイジューユー)(Shutterstock)

水煮魚(スイジューユー)

 重慶発祥、四川料理の系統に入る。もともとは重慶市の地元料理火鍋魚(フォーグオユー)から改良された。1983年、重慶で行われた料理人大会で評判となったことから、全国へ広がり始めたという。一般的に使用する魚は中国原産の淡水魚ソウギョ(草魚)。中国全土に広く生息しているため、手に入りやすく四川料理の代表として全国各地で食べられるようになった。「水煮魚」と書くが水で煮るのではなく、薄く切られた身に高温の油をかけて一気に仕上げる。淡白で弾力のある白身に麻辣風味の油をまとわせ口に入れるとついつい白米が欲しくなる。もやしを一緒に入れることも多く、食感の変化も飽きさせない秘密。通常2〜4人前の大皿で出され、数名で大汗をかきながら花椒で口の中を痺れさせて箸で突き合うのが恒例だ。

糖酢鯉魚(タンツーリーユー)

糖酢鯉魚(タンツーリーユー)

 鯉の甘酢あんかけ。山東省済南市発祥の料理で、山西省や河南省など北の地域でよく食べられる。味付けの前に、まず小麦粉をまぶしてたっぷりの油に投入。鯉が跳ねるような形を作りながら揚げ、最後に砂糖と黒酢などで作ったあんをかける。中国最古の詩篇である『詩経』よると、黄河流域では3000年前から鯉を食べるようになったという。当時内陸部で取れる魚は少なく珍重されたが、現代では川魚の泥臭さのため好んで食べる人が少なく、非常に安価な食材である。しかし、鯉は中国では縁起のいいものとされるため、お正月やお客さんを招くときによく食卓に上げられる。

清蒸多宝魚(チンジェンドゥオバオユー)(Shutterstock)

清蒸多宝魚(チンジェンドゥオバオユー)

 「多宝魚」の日本名称はイシビラメで、もともとはアイスランドなどヨーロッパ地域が原産。90年代中国で養殖されるようになり、特に広東地域で一気に人気が高まった。現在、清蒸多宝魚は広東料理の定番として、家庭でもレストランでも食べられるようになった。「清蒸」とは調理法のことで、調味料は最低限にとどめ、姿を崩さないように蒸すという意味である。食材本来の味が残るため栄養が損なわれないとも言われ、医食同源を重視する広東料理でよく使われる調理法である。そしてイシビラメの身も蒸すことによってうま味が凝縮されジューシーになり、ヨーロッパで主流の焼く調理法とは全く別の風味が楽しめる一品。また「多宝」という名称も読んで字の如く、縁起がいいとされている。広東地域ではお客さんを招くときやお祝いの時、食卓に欠かせない一品である。一方、北京など北部では食材の入手が難しく、食べるチャンスが少ない。

(後編に続く)


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