アリペイとウィーチャット

中国スマホ決済アプリ大解剖(1)支付宝と微信支付

 一昨年末から昨年にかけてPayPayが大々的なキャンペーンを行ってから、続々と各社が参入して一気に普及した日本のスマホ決済。しかし中国ではすでに2010年にアリババグループの「アリペイ(支付宝)」がバーコード決済を初めており、さらに2014年にはテンセント(騰訊)がメッセージアプリ「微信(WeChat)」に決済機能「WeChatPay(微信支付)」を搭載してからスマホでの支払いが爆発的に広まった。

 つまりスマホ決済においてはユーザーも、機能も、利用シーンも、日本の先を行っていると言える。そこであまり深くは知られていない中国スマホ決済の歴史と最新情報、ユーザーの利用シーンなどの紹介を通じて、日本のスマホ決済市場の今後を考えてみたいと思う。

アリペイの誕生

 まずは中国スマホ決済の現状を説明する前に、代表的なアプリであるアリペイとWeChatPayの成り立ちについて紹介したい。

 アリペイは2003年10月に最初の取引が行われたが、アリババが運営するネット通販サイト「タオバオ(淘宝網)」の決済方法として開発された。というのも日本ではネット上ではクレジットカードによる支払いが一般的だが、中国では発行時の与信条件の高さなどから普及が進んでおらず、2015年統計でも1人0.5枚以下という状態だ。キャッシュレス決済の手段はデビッドカードが一般的だった。

 草創期のタオバオでは売り手と買い手が直接会って商品と現金を交換するという形だったため、取引量の拡大にはネット上で安全に決済できるシステムが不可欠だった。

そこでアリババでは、以下のような「担保決済システム」を構築した。

  1. 買い手が注文
  2. 買い手がアリババの口座に代金を振り込む
  3. アリババは売り手に発送を指示
  4. 買い手が受け取り、注文通りか確認
  5. アリババが売り手に代金を振り込む

この決済システム「アリペイ」によりタオバオでの取引量が急増。アリババは大きく飛躍した。さらに2010年には、ネット上でしか使えなかったアリペイを、実店舗の支払いでも利用できるようバーコード読み取り式の支払いも考え出された。

『アント・フィナンシャルの成功法則』P21-29参照)

We Chat Payの衝撃

 WeChatPayについて語る前に「WeChat(微信)」に触れなければならない。テンセントが1999 年にリリースしたメッセージアプリ「QQ」を発展させて開発したのがWeChatだ。メッセージ機能だけでなくSNS機能も備えており、「中国版LINE」とも言われている。

 2012年9月時点でユーザー数2億人、DAU(Daily Active User)1億人という強力アプリに、2014年バーコード決済機能が搭載された。これが「WeChatPay(微信支付)」だ。アリペイの2012年末時点でのモバイルDAUが100万人だったのに対し、WeChatPayはスタートから巨大なユーザー群を有していたことになる。

 さらにテンセントは「紅包(ホンバオ)」という中国のお年玉を贈る習慣に目をつけ、2014年の春節(旧正月)にWeChat上で友達に“デジタル紅包”を送り合おうというキャンペーンを打ち出した。これはWeChatPayの送金機能を使ったものだったが、大いに盛り上がり多くのユーザーに「スマホを使った支払い」という体験をもたらし、ここから中国社会全体にスマホ決済が爆発的な広まりを見せた。現在ではアリペイとWeChatPayが中国スマホ決済市場のBIG2となっている。

(『アント・フィナンシャルの成功法則』P228-229、240-243参照)

中国社会におけるスマホ決済のメリット

 今や都市部ではスマホで払えない店の方が珍しく、財布を持たずに外出する人も決して少なくないほどだ。実際、中国シンクタンク「アイリサーチ(艾瑞諮詢)が発表したデータによると、2019年第3四半期で中国の第三者モバイル決済の交易規模が56兆人民元(約896兆円)で過去最高額となっている。

 一方で、交易規模の伸び率を見ると、過去最低の前年比15.2%と鈍化が止まらず、すでに中国のモバイル決済市場は緩やかに拡大する成熟期に入ったと思われる。

中国モバイル決算市場の規模
アイリサーチ発表のデータを元に作成

 では、急速に普及しただけにとどまらず、中国社会の決済シーン自体を変えるまでに至ったのだろうか?ユーザー、店舗、行政の視点から見ていきたい。

【ユーザー】
「安全性」…現金を持ち歩くと財布の紛失、スリ・ひったくりといった犯罪に遭うリスクが必ずあるが、スマホであればパスワードや生体認証などのセキュリティ機能があるため他人が勝手に支払うことは難しい。またおつりなどに偽札や劣化した紙幣が紛れ込んでいることもあったため、スマホ決済はこれらの不安を一掃する画期的なシステムだった。

【店舗】
「コスト」…導入時にはバーコードが描かれたパネルを置くだけ。クレジットカードのように高価なカードリーダーを導入しなくても良い。また偽札の被害に遭う心配もなくなる(偽札発見器を置いている店舗もあった)。

「効率化」…売上が全てオンライン上で管理できるため毎日、現金を数えて売上計算をする時間を短縮できる。

「データ」…購入客のデータがわかり、効果的な販売戦略を組み立てられる。

【行政】
「データ」…子供から高齢者まで幅広いユーザーの決済記録から数億人分の信用情報などののビッグデータが得られ、国民の管理に活用できる。

まだまだある決済アプリ

 中国モバイル決済市場は、アリペイが54.5%、WeChatPayを含む「財付通」が39.5%で、この2つで94%という圧倒的なシェアを持っている。

2019Q3 中国第三者モバイル決済市場のシェア(アイリサーチ発表のデータを元に作成)

しかしこれらの他にも、様々な会社が同様のサービスを展開している。

  • 壹銭包(イーチェンバオ):保険大手「平安グループ」が運営
  • 京東支付(JDPAY):ネット通販大手「京東」が運営
  • 聯動優勢(UMPay):通信会社「チャイナモバイル」と「銀聯グループ」との合弁会社が運営
  • 快銭(99bill):不動産大手「万達(ワンダ)グループ」傘下「快銭(クワイチェン)」が運営
  • 易宝(YEEPAY):フィンテック企業「易宝支付」が運営
  • 銀聯商務(UMS PAY):「銀聯グループ」が運営
  • 蘇寧支付(SUNING PAY):ネット通販大手「蘇寧」が運営

 これらの多くは保険、ネット通販、商業施設など自社のサービスとモバイル決済アプリを結びつけることによって、一定のユーザーをしっかりと確保している。

 この他にも、iPhoneのApple Payと同様に、スマホに最初から組み込まれたファーウェイの「Huawei Pay」シャオミの「Mi Pay」という決済アプリもある。


(次回)ミニプログラムで多機能化

<参照サイト>
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201810/201810m.pdf
https://www.hitachi.co.jp/products/it/finance/insights/essay/1003-china.html
http://report.iresearch.cn/report/202001/3525.shtml

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