抖音や快手、中国ショートムービー各社が見据える巨大な市場とは?

ショートムービーというサービスをご存知でしょうか。ユーザーが作った動画でありながらYouTubeとも違う、1分程度の短い作品がショートムービーであり、このサービスが日本では若者を中心に魅了しています。このブームの火付け役ともいえる中国企業、その動向と今後の注目点を改めてご紹介していきたいと思います。

中国国内のショートムービー市場

中国の調査会社iResearchが公表したデータによれば、中国のショートムービー市場は2020年までに1506.4億元(約2兆2,837億円)まで成長する見通しで、成長著しい市場とみられています。2016〜2017年ごろに盛り上がりを見せたショートムービー市場ですが、大手サービスではすでに4億のユーザー数を抱え、中国国内市場での登録ユーザー数は頭打ち状態という状況です。
※1元=15.16円計算

二大サービス、TikTokとKwai

ショートムービーとして、まず挙げられるのがBytedance(バイトダンス)が運営するTikTok(中文名:抖音)です。このサービスは2016年に中国国内でリリースされ、若年層を中心にユーザー数を伸ばしました。アメリカの調査会社Sensor Towerによると、全世界のApp Store・Google Playでのダウンロード数は20億を突破、ショートムービー業界の中で最もグローバル展開に成功しているサービスといえるでしょう。

もう一つ注目すべきはKwai(中文名:快手)。もともとはGIFを作るサービスでしたが、2013年より本格的にショートムービーへ舵を切り、ユーザー数を拡大。TikTokほどではありませんが、マレーシアやブラジルなどへ進出しているほか、メキシコやアルゼンチンでも人材も募集しており、今後のさらなる海外展開が期待される企業です。

このほか、騰訊(テンセント)の微視、阿里巴巴(アリババ)のVMate、百度(バイドゥ)の好看視頻、歓聚時代(YY)傘下のBIGOが運営するLikeeなど、様々な企業が世界のショートムービー市場のパイを争っている状況です。

対立構造はテンセントvsバイトダンス?

ショートムービー市場の二大サービスはTikTokとKwaiで、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)をはじめとするテックジャイアントはこの業界では後手に回っています。ただし、これまでWeChatやTaobaoなどのサービスでユーザーを囲ってきたこれらの企業が、成長著しいショートムービー市場を無視していることはありません。テンセントはこの2年でKwaiへの投資を加速させ、これによりKwaiは一度頓挫しかけた海外進出を推し進めています。KwaiはブラジルでのDAU(デイリーアクティブユーザー)が700万を超え、順調な展開を見せています。また、アリババは傘下のUCWebによるサービスVMateをリリースしているほか、TikTokとのライブコマース提携を行っています。

TikTokはKwaiに比べるとサービスの開始が遅かったのですが、アメリカのショートムービー企業Musical.lyを2017年に買収し、海外進出に弾みをつけることに成功しました。もともとは、TikTokを有するバイトダンスのほかに、テンセント・KwaiもMusical.lyの買収を計画していましたが、結果Musical.lyはバイトダンスの手中に。これにより瞬く間に巨大なユニコーン企業となったバイトダンスは、WeChatを有するテンセントに焦りをもたらしました。Kwaiへの投資拡大、海外進出の加速にはこうした背景が一つ要因として挙げられるでしょう。

主戦場は海外へ、注目される市場とは

盛り上がりを見せるショートムービー市場ですが、中国国内ではすでに莫大な数のユーザー数を抱えるサービスが出てきているため、飽和状態であるとの見方が強いようです。そのため、中国のショートムービー企業はこの1、2年の間に海外進出を強く推し進めるようになりました。

先に記した通り、海外進出が最も盛んなのがTikTokで、KwaiはTikTokの影響力が比較的弱い地域を中心に展開しています。このほかYYのLikeeやアリババ傘下にあるUCWebのVMateなども海外市場で運営を行っています。

こうした中、とりわけ進出が盛んな市場がインドです。インドは人口13億5,000万を超える国で、今後も経済成長が見込まれています。TikTokはもちろんKwaiが展開するUvideo、YYの Likee、Xiaomiが投資を行うShareChat、アリババのVMateがこぞってインド市場に進出しています。

しかし、同時にインドは難しい市場ともされています。一つはローカライズが煩雑であること。なぜならインドは、準公用語の英語のほか、連邦公用語であるヒンディー語を含む、憲法に定められた22もの言語あるからです。例えば、日本であるサービスをローカライズしようとした場合、言語は日本語に翻訳すれば問題ありません。しかしインドの場合、英語やヒンディー語だけではカバーしきれないユーザーが多く存在します。こうした状況に対応しているのが中国企業で、各ショートムービーは様々な言語を選択することができる仕様となっています。とはいえ、アプリがアップデートされるごとに20前後の言語に対応させるというのはAIがある程度おこなうにしても、しばらくは煩雑な手作業が必要になると筆者は考えています。

もう一つは、マネタイズの難しさです。簡単にいえば、インドでは課金をする習慣があまりないということです。たしかに、インドは経済発展著しい市場ですが、一人当たりGDPでみれば約3,870ドル(約41万円)。日本は約39,303ドル(約421万円)ということを考えると、まだまだ娯楽に回せる金額が少ないというのが現状です。ユーザー数を獲得した後にマネタイズできなければ意味がないため、インド進出を果たしたとしても、収益構造が確立されるまでは先行投資を続けなければならず、一種「我慢比べ」のような状況が繰り広げられています。
※1ドル=107.14円計算

上記の点を考えれば、インドのA地域ではこのサービス、B地域ではあのサービスといった具合に、インド国内でサービスどうしの「棲み分け」がなされること可能性も否定できません。ある一社のサービスがインド全土で力を持つのか、分散した勢力図が広がっていくのか、ショートムービー市場を図る上での一つの指標となりえるのではないでしょうか。

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