世界2位の中国コスメ市場、専門家が考える成長のカギは「95后、EC、地方都市」

近年、中国のコスメ市場が盛り上がっていることをご存知でしょうか。中国の化粧品市場の規模は、いまやアメリカに次ぐ世界第2位、中国のコスメ市場は大きな可能性を秘めています。近年では、中国の国産コスメブランドも台頭しつつあり目が離せません。

今回は、中国のコスメ市場の特徴や最新のトレンドなどについて、日本企業に対する中国市場展開のサポートや中国コスメ市場に関する情報発信をおこなっている一般社団法人日本美粧協会へZoom取材を依頼。広報担当 古郡さんにお話を伺うことができました。

「メイクは自己表現の一つ」という考え方

ーーこれまで中国の方はノーメイク・薄化粧の人が多い印象でしたが、近年ではメイクへの関心が高まっていると感じています。このように人々のメイクに対する意識を変化させた要因は何でしょうか。

ここ10年ほどでメイク文化が根付いてきた大きな理由としては「経済的な理由」が挙げられます。経済的に豊かになったことで、美容にお金をかけられるようになってきたと考えられます。

また、中国ではメイクを「自己表現の一つ」と考える人が多いことも関係しているようです。日本では「マナー」としてお化粧をする人が多いですが、中国では自己表現の一つとしてメイクが定着してきていると感じています。

さらに、ライブ販売なども広まり、美容に関心を持つきっかけが増えたこともメイクへの意識を変える要因になっています。中国では「口コミ」が消費において最も影響力を持っているため、SNS上での書き込みやライブ販売などによる口コミが購買を促している状況です。

ーー大きな可能性を秘める中国のコスメ市場。メインとなっている購買層や、これから消費が伸びるであろう潜在層について教えてください。

化粧品の消費が最も多い層は、中国語で「90后(ジュウリンホウ・1990年代生まれ)」といわれる若者、その中でも「95后(ジュウウーホウ・1995〜99年に生まれ)」が中心となっています。こういった若い世代は、稼いだ分だけ消費をする傾向があり、消費を押し上げています。

とはいえ、中国では1人当たりの美容に対する消費額は日本の約7分の1程度しかありません。消費が最も多い「95后」(いわゆるZ世代)の若者であっても、1人当たりの美容消費額の平均は年間1,700元(約2万6,000円)ほどです。これを見て分かるように、中国のコスメ市場は、全世代を通してまだまだ伸びしろがあるといえます。

また、都市別の消費傾向についてお話すると、北京や上海などの大都市での消費はすでに頭打ちとなりつつありますが、地方都市や農村都市では今後も消費が伸びる可能性が大きいです。中国はECが発展しており、「アリババ(Alibaba)」や「京東商城(JD.com)」などのECサイトが、地方での消費拡大を後押ししています。

新型コロナウイルスが与えるコスメ市場への影響

ーー現在中国で流行しているブランドはありますか。

流行しているブランドとしては、中国の国産コスメが伸びています。例えば、中国コスメ企業・逸仙電商が2017年に発表したコスメブランド「完美日記(Perfect Diary)」は、若者を中心に人気を博しています。これまで中国人は自国の製品に対する信頼が薄かったのですが、国産製品への信頼感、安心感が高まっているように感じます。

新型コロナウイルスの影響はコスメ市場に何か変化をもたらしているのでしょうか。

最近のトレンドという点では、アイシャドウの注目度が増しています。コロナウイルスの影響でマスクをつけて外出することが増えたため、顔の上半分のメイク、特に目元のメイクにこだわった「半顔メイク」が流行しています。コロナショック前までは、中国では「口紅」のラインナップに注目が集まっていましたが、マスクをつけていると口元が見えないので、アイシャドウなどの目元のメイクがトレンドとなりました。また、家にいる時間が長いため、スキンケア商品やシャンプーなどのセルフケア商品の消費が伸びています。

新型コロナウイルスの影響で販売チャネルにも変化がみられています。オンラインでの販売が非常に伸びています。ECサイト天猫(Tmall)では、2020年1月~3月の売り上げが、2019年と比べて50%以上増加するなど、オンラインでの購買が急上昇しています。今後、アフターコロナ、ウィズコロナの世界で、消費がどのように変化していくのか、注視していきたいです。

大切なのは中国市場のしっかりとした理解

ーー2019年に中国の化粧品輸入総額において日本が1位となったそうですが、なぜ日本のブランドが人気なのでしょうか。

日本のコスメブランドが人気な理由として、1つ目は「安全性」が挙げられます。企業の海外進出を支援しているJETRO(日本貿易振興機構)が2018年に実施した調査では、「安全・安心」なイメージのある国として、日本が第1位となっています。日本の商品の中では、直接肌に触れる「スキンケア商品」が人気ですが、これは安全性が高い日本ブランドへの信頼を反映しているといえるでしょう。

また、日本のブランドが人気である2つ目の理由としては、「化粧品技術の高さ」が挙げられると思います。化粧品に応用可能な研究結果を発表する国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)の国際学術大会にて、日本は毎回のように受賞をしており、世界の注目を浴びています。

このように、「スキンケア分野」において一定のポジションを獲得している日本ブランドですが、一方で「カラーコスメ分野」では発色の良い韓国コスメや、中国の国産コスメが人気となっています。

ーー日本企業が中国に出店する際、どういったところで苦戦することが多いのでしょうか。

中国現地のことをリサーチせずに展開している企業は苦戦してしまいます。
中国は言語、プラットフォーム、消費者インサイト、全てが日本市場と違います。また、中国では日本以上にECやライブ販売が発達しています。

自社商品の流通状況の現状把握、消費者のニーズ、プロモーションの仕方を見誤ると、コストだけが膨らんでしまうことがあります。プロモーションを例に取ると、中国は広告の文言への規制も厳しく、「美白になる」といった文言が中国では使えなかったりします。

中国独自の消費スタイルやプロモーション方法を理解し、展開することが大切です。例えば、日本ではブランド公式サイトがあることが当然ですが、中国では違います。公式サイト、公式店舗以外の認知獲得や売上にも力を入れているのです。日本ではTaobaoはC2Cのプラットフォームで小さな個人店舗の集まりと認識されていますが、ファンを数十万人〜数百万人をかかえる影響力の強い店舗もあります。現地企業はTaobao店舗をただの卸先ではなく、販売を通じてブランド認知や初期ファンの獲得をする場として活用し、それを最終的にTmallなどの公式店舗での売上利益につなげているケースがたくさんあります。

日本ではインバウンドや越境EC、KOLによるライブ販売ばかりが注目されていますが、淘宝の影響力がある店舗に商品を卸すことから始めるなど、中国市場の現状に合った展開をしていくことが成功への近道となるのではないでしょうか。
【ライター:小静】

古郡優(ふるこおり ゆう)さん
一般社団法人日本美粧協会 広報・マーケティング/China Cosmetic Lab 所長
中国語に魅せられ、大学在学中に香港中文大学に短期留学。新卒では呉服屋に入社。その後、専門商社、コンテンツ系ベンチャーにて広報、バックオフィス全般を経験した後、2019年に一般社団法人日本美粧協会に入社し、広報、マーケティングを担当。2020年4月にはChina Cosmetic Labを立ち上げ。SNSでの情報発信の他、イベントやコミュニティ運営を通じて中国化粧品市場の可能性・成功方法を伝える。

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