「持たざる物流」で効率化、アリババ傘下の菜鳥(ツァイニャオ)の戦略

今やEC大国となった中国。このECに欠かせないのが配送業務です。アリババの一大セール「独身の日」で一気に増えた物量を物流会社がさばききれず、いわゆる「物流崩壊」を引き起こしました。しかし近年では需要予測などの技術により、大型セールの際にも滞りなく配送されるようになりました。この背景に見えるのがアリババ傘下の「菜鳥網絡」という物流企業。今回は、この菜鳥網絡についてその概要や取り組み、特徴を解説していきたいと思います。

アリババ傘下の「菜鳥網絡」とは

菜鳥網絡(ツァイニャオ・以下、菜鳥)は2013年にアリババグループが共同創業者の一社として設立した物流会社です。テクノロジーを用いた独自のシステムを用い、物流の効率化を図っています。

オフィシャルサイトに記載された同社の目標は「国内は24時間以内、海外は72時間以内の配達」とされており、実際に2016年にはスペインに倉庫を開設し、72時間以内の配送体制を整えています。

同じく2016年には、日本通運株式会社との提携を発表、アリババの越境ECサービス「天猫国際」へ出店する日本企業に対する物流窓口を担っています。2019年にはアリババが菜鳥に対し増資を行い、これにより同社の63%の株式を所有することになりました。

後手に回ったアリババの物流

EC最大手のアリババですが、物流に関しては後手に回っていました。同じくEC大手のJD.comは自社で物流会社を運営しているため、配送に関していえば、JD.comの方がアリババの運営するTaobaoやTmallを上回っていました。この状況を打開するために、アリババは2008年の運送会社・百世快递への投資を皮切りに、物流事業に力を入れてきました。

運送会社が形成する「菜鳥連盟」

菜鳥は自社でトラックや船舶などの運送手段を運用することはしません。パートナー企業の運送会社から成る「菜鳥連盟」を形成し、各会社に対し効率的な物流ソリューションを提供し、運送は彼らに担当してもらう仕組みを採用しています。

物流網の拡大を担う「菜鳥郷村プロジェクト」

アリババやJD.comが力を入れているのは地方に住む消費者の需要の掘り起こしだと考えられています。しかし、物流網がなければサービスを提供することができません。そのため、菜鳥では農村部の運送会社を募り、物量予測や当日の渋滞状況によって、AIが最適な配送ルートを示すといった技術を提供しています。この「菜鳥郷村プロジェクト」より、菜鳥は物流網を拡大しており、オフィシャルサイトによれば、2018年時点ですでに3万以上の村をカバーしているとのことです。

宅配預かりサービス「菜鳥ステーション」

このほか、宅配預かりサービス「菜鳥ステーション(中国語:菜鸟驿站)」の拡大も行っており、自宅の住所を知られたくない、また一人暮らしで家を不在にすることが多い利用者に重宝されています。また、運送業者からしても、一戸一戸を訪問する手間が省けるといった利点があります。

「菜鳥ステーション」を開設しようとした事業者はまず加盟申請を行い、審査を経て同サービスを提供できるようになります。このサービスのみを行う事業者もいれば、コンビニやスーパー、個人商店など、店の空きスペースを有効活用する事業者もいます。店側は荷物の数量に応じて手数料を稼ぐことができるため、菜鳥はこうした中小事業者に対し副業としての加盟を促しているようです。ここでも菜鳥は自社でサービスを運営するのではなく、事業者に対しシステムのみを提供しています。

特徴は「持たざる物流」

先日、都市を中心に広まった宅配ロッカーサービス「豊巣(フォンチャオ)」がサービスの有料化を発表し、これに対し消費者からは「費用がかかるなら使わない」といったマイナスの声があがりました。「豊巣」は2020年第一四半期において、2.45億元(約37.41億円)の損失を出しており、収益構造の転換が求められていました。無人ロッカーは人件費がかからないものの、初期の設置費用やメンテナンス費用がかかることは無視できません。
※1元=15.27円計算

一方、菜鳥が提供するのはあくまでソフト面でのソリューション。もちろん、近年の自動化の流れから宅配ロボットを製造・運用しており、こうしたハードを所有していることは事実ですが、菜鳥が提供するサービスの大部分はビッグデータ・AIなどを駆使したテクノロジーの活用に留まっています。今後、同社が行う「持たざる物流」が功を奏すのか、今後注目すべき点といえるでしょう。

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