ファーウェイも参入、中国「AR観光」の現在地

「AR(拡張現実)」とは、スマートフォンなどの端末のカメラを通して、現実の世界に新たな情報を加える技術です。スマートフォンゲーム『Pokémon GO』はこの技術を使い、世界的なムーブメントを起こしました。活用用途はゲームだけでなく、教育や観光など様々な分野で使われています。今回は中国のAR観光にフォーカスして見ていきたいと思います。

巨大な中国のAR市場

調査会社IDCが2019年に公表したデータによれば、世界のVR・AR市場(支出額ベース)は2020年に188億ドル(約2兆99億円)に達するとされています。また、中国のVR・AR関連の投資額は57.6億ドル(約6,158億円)となると予測されており、これは全世界の市場規模の30%以上を占めるとされています。もちろんこの数値にはARだけでなく、VRの数字も含まれていますが、AR市場において中国が一定の影響力を持つことは間違いないでしょう。
1ドル=106.91円で計算。

伸びしろが大きいとされたAR観光

ARが一般消費者層に広まったのは、2016年の『Pokémon GO』の大ヒットが背景にあると考えられます。ゲームの分野では成功例ができたARを観光業界にも積極的に取り入れようという考えは自然な成り行きといえます。

英・調査会社Technavio「Global Mobile Augmented Reality Market 2017-2021」のデータによれば、2016年時点で世界のAR産業全体の中で、観光業界が占める割合は11%と低い割合となっており、拡大の余地が大きいとみられていました。こうした状況の中、AR観光は中国でどのような展開を遂げているのでしょうか。

いまだ一部に留まる観光地での活用

筆者の感覚では2017年ごろから「AR観光」が、たびたびメディアに取り上げられていたように感じます。検索エンジンや地図アプリなどを運営する百度(バイドゥ)が、2017年に兵馬俑のある西安の秦始皇帝陵博物院とAR観光サービスを打ち出し、2018年には広州の動物園と開発したアプリ「長隆AR動物園」のローンチするなど、観光地ごとのARサービスを次々と展開しました。同社はこのほか、2019年末にも山東省泰山景区のAR観光サービスを開始しています。

2020年に入り、位置情報を用いたAR観光に着手し始めたのが通信機器大手の華為(ファーウェイ)です。同社は2020年に「AR地図」という新たなサービスをローンチしました。このAR地図を用いれば、ARカメラを通し建物の名前を表示することや、ナビゲーション機能を使うことが可能になります。また、甘粛省の敦煌にある石窟寺院の「莫高窟」で、ARカメラを起動すると現実世界の中にデジタル壁画が出現するという新たな観光サービスも提供しています。現在は試験的に一部地域のみで対応しているサービスですが、ファーウェイは2020年末までに1,000カ所以上で利用できるよう目指していくとのことです。

スマートフォン以外の例も

スマートフォンだけでなく、スマートグラスを用いたAR観光にも動きがみられています。2019年11月、Vieewer ARスマートグラスを発売する杭州歴歴信息科技有限公司と、AR技術を用いた観光ガイドサービスを提供している上海知客网络科技有限公司が戦略的パートナーシップを結び、スマートグラスを用いたAR観光を手掛けるとの報道がありました。

スマートグラスはいまだ機能が定まっていないことや、見た目がまだスタイリッシュでないことなどにより普及がみられませんが、5G通信の普及に伴い、どう機能の拡充を行っていくのか注目されます。

利用範囲の拡大がカギか

以上のように、2017年ごろから少しずつ開発が進むAR観光。ただし、ゲーム業界では『Pokémon GO』の成功例により、位置情報を用いたゲームに人気IPを載せるという一つの最適解が生まれているのに対して、AR観光は圧倒的な影響力を持つサービスはまだ表れていないのが現状で、各観光地が独自のARサービスを打ち出すにとどまっています。

観光地ごとにサービスやアプリが違えば、ユーザーはいちいちサービスを使分ける手間が発生してしまい、普及の妨げになる可能性があります。そういった観点からみると、年内に利用範囲を大幅に拡大する見込みのファーウェイ「AR地図」が、2020年にどのような展開を見せるかが一つの注目ポイントとなりそうです。

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