世界一の豚肉大国・中国、アリババや京東も参入する「スマート養豚事業」の背景にあるもの

豚肉の生産量・消費量ともに世界一を誇る中国。近年、阿里巴巴(アリババ)やネットイース(網易)など、一見全くかかわりがなさそうな企業による養豚業への参入が目立っています。今回は中国の養豚産業やIT企業による参入状況などについてみていきます。

消費量と生産量、ともに世界一

米国農務省の数値によれば、2017年の中国の豚肉生産量は5,340万トンとなっており、アメリカの1,161万トンと比較しても非常に大きい数字であることがわかります。また、同データによれば、中国の豚肉消費量は5,481万トンで、これは日本の271万トンの約20倍にあたり、人口が約11倍であることを考慮しても一人当たりの消費量が多いことが見てとれます。

豚肉の生産量が大幅に減った2019年

国家統計局のデータによると、中国の豚肉生産量は2018年まで5,400万トン程度で推移していましたが、2019年には4,255万トンに減少しています。この大幅な減少の背景には2018年に中国国内で発生したASF(アフリカ豚熱)により、大量の豚を殺処分したことが挙げられます。

また、環境保護政策も豚肉の生産量に影響しています。養豚事業を行う際、とりわけ汚水処理の問題は、生活用水の水質に影響を及ぼすため、河川や湖などが多い地域では非常にナーバスな問題として扱われていました。地方政府の中には環境保護を声高に叫び、飼養禁止区域を設定するところも現れました。

しかしながら、この過剰な行動は豚肉の生産量を減少させる原因ともなっており、状況の改善策が示されています。2019年に、中華人民共和国農業農村部が公布した養豚業に関する「三年計画」では、広東省や浙江省などに対し豚肉の自給率70%を要求したことのほか、過度な飼養禁止区域の設置を改めさせること、また中小畜産家への支援策などが盛り込まれました。これらの施策により、2021年までに豚肉の生産量をこれまでの水準に回復させることを目指しています。

IT大手の参入が目立つ養豚業

こうした状況のもと、これまで養豚事業を行っていなかった企業の参入が目立ってきています。

冒頭に述べた通り、IT大手企業の養豚業進出が目立つ中国。その先駆けとなったのがメールサービスやゲームなどで知られるIT大手のネットイースです。同社は2009年にいち早く養豚事業に参入しています。当初は「遊びでやっている」と揶揄された事業でしたが、2020年現在も継続して豚肉の生産・販売を行っています。テクノロジーを駆使し、環境に配慮した養豚を行っていると謳っており、すでに「ブランド豚」として一定の地位を築いています。

中国EC大手のアリババも養豚事業に投資を行っています。アリババ傘下のクラウドサービスAlibaba Cloudは、2018年に四川得駆集団、徳康集団と提携し、AIシステム「ET大脳」を活用した養豚事業に取り組むと発表しました。「ET大脳」を搭載したカメラにより、豚の一匹ごとの体重や日齢、運動量などの情報をデータ化し、効率的な養豚業を行うとしています。

また、アリババ同様EC大手して知られる京東(JD.com)傘下の京東数科も、2018年にAIとIoT、そしてSaaSの三つの技術を用いた養豚事業のソリューションを打ち出しています。話題を呼んだのが「豚の顔認証」。この技術はもともと、家畜の死亡に対する補償を備えた「畜産保険」で、死亡頭数をごまかすことを防止するために開発された技術でした。しかし、この技術は養豚のさまざまな場面に応用できるため、スマート養豚事業に取り入れたと京東数科の曹鵬氏が語っています。また、同社は2019年に「声紋認証」技術を用い、豚の鳴き声や咳のデータを収集分析し、感染症などの早期発見に役立てたい考えも示しました。

テクノロジーが担う今後の養豚業

IT企業のほかにも、不動産大手の碧桂園や万科も養豚事業に乗り出すことを発表しています。食卓に欠かせない豚肉の生産量が落ち込めば、価格が上昇し、人々の生活に影響が出ることが予想されます。こうした状況を防ぐため、大企業による参入が目立つ中国の養豚業。テクノロジーを駆使した養豚がどんな結果をもたらすのか、注目すべきトピックの一つといえるのではないでしょうか。

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