【中国ニュース読み解き】急拡大する中国オンライン広告に潜む闇を考える

先日紹介した中国インターネット大手のテンセントと老舗調味料会社・老干媽(ラオガンマー)との間で起きた広告詐欺事件。

この事件そのものは一件落着を見ましたが、テンセントに同情する声は多くはありません。そこには中国オンライン広告が抱える数々の問題が存在しており、その問題に出稿する企業もその広告を見る消費者も振り回されているからです。

今回はニュース紹介から少し離れて、中国オンライン広告におけるホットな話題を見てみましょう。

バブル化するライブコマース

中国の調査会社iResearchの調査によると、2019年中国のオンライン広告の市場規模は約6000億元あまり(約9兆円※1元=15円で計算)。日本は約2兆円の市場規模ですので、4.5倍ほどもある巨大市場であることがわかります。

その背景にあるのは急速に拡大したインターネット社会。

中国のインターネット人口は中国総人口の約6割、8億人ほどといわれており、その98%がモバイルユーザーです。

そうした環境のなか、2003年のSARS流行以降に拡大したのがeコマース。淘宝(タオバオ)や天猫(Tmall)、京東(ジンドン)、また近年は拼多多(ピンドゥオドゥオ)といったECプラットホームが登場し、ほぼあらゆるものがこうしたプラットホーム上で購入できるようになっていきました。

さらには微博(Weibo)、微信(WeChat)、小紅書(RED)、抖音(中国版TikTok)といったSNSが消費者の生活に深く浸透し、それぞれのアクティブユーザーも数億人単位で存在しています。 自然とこうしたオンライン、特にSNSを通じた広告が、消費者への商品訴求の中心となっていき拡大したわけです。

そのなかで生まれたのが「網紅(KOL/Key Opinion Leader)」と呼ばれるインフルエンサーであり、それらをマネジメントするマルチ・チャネル・ネットワークサービス「MCN」でした。

こうして広がったオンライン広告市場ですが、多くの課題が次々と発生してきます。

2020年6月のネット商戦「618」セールではKOLによるライブコマースが大きな消費を引き起こしましたが、こちらでは昨年から「データの水増し、偽造」や、「刷単」と呼ばれる組織的な「購入・返品を行うことで売上を高く見せる」行為などが企業側を悩ませています。

この状況を2020年7月22日付『中国経済網』では「干掉GMV:数据注水,骗术升级,撕掉直播电商的虚假繁荣面纱(GMV/流通取引総量を見るな:データ水増し、ウソのエスカレート、ライブコマースブームの偽りのベールを剥がす)」という記事で報じています。

昨年には、中国ライブコマースを代表する“カリスマKOL”が紹介した焦げ付かないのはずのフライパンが、ライブ配信中に焦げ付いてしまい消費者が不信感を抱いたり、また本人は全く知らずにニセモノの「ブランド上海ガニ」を売らされてしまった結果、後に謝罪するというトラブルに見舞われています。

実際に「オンライン広告やECなら物が簡単に売れる」と思い飛びつく企業にも問題はあるのですが、悪質な「自称KOL」やMCNが乱立しているのも確か。

さらにその乱立で多くのMCNの収益が悪化、短期的な資金繰りのために上記の不正に手を染める企業やKOLが後を絶たないようです。

こうした背景にいるのは、これまで中国のオンラインビジネスを牽引し、巨額の利益を上げてきたBAT(バイドゥ・アリババ・テンセントの略称)を主とする、オンラインビジネスのリーディングカンパニーだという見方もあります。

実際、テンセントの大きな収益源はネットゲームですが、同時に微信を主とする自社のSNSを通じた広告サービス、またMCNにも投資をし、オンライン広告市場の拡大を担ってきたのです。

これは裏を返せば、テンセントもしくはアリババやバイドゥのような中国オンラインビジネストップ企業は、オンライン広告を拡大させてきたがその管理をしてこなかった、数々の不正や問題をビジネスのために野放しにし消費者の権益を侵害してきた、という印象があるのです。

日本企業でも多くが注目する中国のオンライン広告。しかしそこには数多くの課題も存在しています。

中国政府はオンライン広告やライブコマースに関する規定を出すことになっていますが、これを機に少しでもクリーンになってもらいたいものです。
【白圭HAKUKEI】

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