2020/07/31 デジタル&IT

ファーウェイとの提携相次ぐ、中国企業のクラウドゲーム参入への動き

2019年、Googleがクラウドゲーミングサービス「Stadia」をローンチしてから、ゲーム業界でクラウドゲーミングが話題となりました。すでにいくつものサービスがローンチされる中、今回は巨大化したゲーム市場を抱える中国の動きがどのようなものなのか見ていきたいと思います。

そもそもクラウドゲーミングとは?

クラウドゲーミングとは、クラウドサーバーでゲームの情報を処理し、端末画面にストリーミングで配信すること。処理を行うのはクラウドサーバー側なのでスマートフォンやゲーム機といった端末のスペックが低かったとしても、高いクオリティのゲームを楽しめます。また、端末のメモリを消費せずに様々なゲームを遊ぶことができることもメリットの一つで、ストレージを気にしながらゲームをダウンロードする必要がなくなります。デメリットとしてはインターネット接続がないとプレイできないことや、回線遅延などが挙げられます。

これまでにローンチされた代表的なクラウドゲーミングサービスを確認しておくと、Googleの「Stadia」のほか、SIE(Sony Interactive Entertainment)の「PlayStation Now」や、マイクロソフトの「Project xCloud」、NVIDIAの「GeForce NOW」などがあります。また、2020年に入り、The New York Timesなどの一部報道でEC最大手Amazonのクラウドゲーミング参入が報じられており、徐々にゲーム会社ではない企業の参入が目立ってきています。

グローバルの視点から目を離し、中国ではどういった状況なのでしょうか。中国はIT企業とゲーム事業との距離がほかの国や地域に比べて非常に近いのが特徴です。テンセントは中国で一番メジャーなトークアプリWeChatや決済機能WeChat Payを持っていると同時に、人気タイトル『王者栄耀(Arena of Valor)』、『和平精英』、『QQ飛車』などを抱え、網易(ネットイース)は『荒野行動』や『第五人格』といった人気ゲームのほか、メールサービスや音楽配信サービスなども提供しています。

パートナーシップ・投資を進めるテンセント

まず、テンセントのPC・コンソールに限定したクラウドゲームについての動きを見ていきます。PocketGamer.bizなどの海外メディアの報道によると、2019年7月、テンセントはクラシックゲームを扱うクラウドゲームプラットフォームを運営するイギリス企業Antsteam Arcadeへ投資を行ったほか、同年12月にはアメリカの半導体メーカーNVIDIAと提携し、クラウドゲーミングプラットフォーム「START」にNVIDIAのGPU技術を使うことを発表しました。

一方で、モバイルゲームについては「Tencent Instant Play(騰訊即玩)」というサービスをすでに開始しています。モバイルゲームに特化した同プラットフォームは、記事公開日現在WeChat公式アカウントから試験的に利用することができ、1回のプレイ時間に上限が設定されているものの何度も遊ぶことができる仕様になっています。まだテスト配信の段階であるため、課金などの仕組みは実装されていません。

このほか、テンセントはモバイルクラウドゲームに関するソリューションにも着手しています。これがファーウェイの半導体「Kunpeng」を使った「GameMatrix」です。もともとテンセントはクラウドゲーミングに関するソリューションを提供するプラットフォームを2019年3月に「CMatrix」というサービス名で打ち出していましたが、GameMatrixではファーウェイの半導体技術や通信技術を取り入れ、さらにパワーアップしたものになると見込まれます。

自社タイトルを中心としたプラットフォームを形成するネットイース

2019年6月、ネットイースはファーウェイと覚書(MOU)をかわし、「5Gクラウドゲーミングラボ」の開設を発表。両社は今後、同ラボでユーザーのニーズ把握やクロスプラットフォーム技術の検証などを行っていくと公表しました。

このほか、ネットイースは2019年11月にクラウドゲームプラットフォーム「網易雲遊戯」を試験的にスタートさせています。同プラットフォーム上ではPCゲームは一定時間テストプレイすることができ、その時間を過ぎると課金される仕組みをとっています。現在は自社のタイトルを中心にLiLith Gamesの『AFK Arena』やmiHoYo『崩壊3rd』など、一部別会社のタイトルもラインナップとして並べていますが、タイトル数はまだ少ない印象です。

ファーウェイとのパートナーシップが目立つその他企業

上記2社のほか、37 Interactive Entertainmentはファーウェイと5Gやクラウドゲーミングに関する項目でパートナーシップを締結、YOOZOO Gamesもファーウェイとクラウドゲーミングのソリューションや製品の開発などでパートナーシップを結んでいます。海外製のタイトルを中国国内で展開しているほか、自社開発も行うiDreamSkyは2020年3月に自社タイトルをクラウドゲームとして展開したい考えを示しました。

まずは国内でサービスを発展させられるか

中国のインターネット環境はほかの国や地域と比べて独自性が強く、一部の海外製サービスが使用できないことにより、同様のサービスが中国国内のみで流通していることがほとんどです。加えて、中国のゲーム企業が軒並み国内企業であるファーウェイとパートナーシップを結んでいるところを見ると、中国でのクラウドゲーミングは、インターネットの普及により世界的なブームが起きやすくなった現在においても、「グローバルではこのサービス、中国ではこのサービス」といった独自の発展を遂げていくのではないかと筆者は考えています。

中国のゲーム企業はこれまで海外進出を加速させていましたが、先にみてきたようにクラウドゲーミングに関しては国内での地固めの段階であるように思われます。実際に中国企業の提供しているクラウドゲームをプレイしてみると、フリーズしたりラグを感じたりすることがあり、まだまだ技術的に乗り越える壁はありそうだと感じます。ただし、ある程度の地固めが完了した段階で海外進出する可能性は大いにあるため、「どのような動きをするのか」「自国での成功例をどのように海外に輸出するのか」などは引き続き注視しておく必要があるでしょう。

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