2020/08/03 デジタル&IT

ビリビリ動画フォロワー260万人超!中国で活躍の山下智博氏、クリエイターの中国展開を支援

日本のYouTuberのように、中国では「網紅(ワンホン)」と呼ばれるインフルエンサーの影響力が日に日に大きくなっています。中国ビジネスを考えたときに切っても切り離せない動画配信サービスやインフルエンサーの存在。にもかかわらずその実情については「よくわからない」という方も多いのでは?

今回は、ビリビリ動画がその年に活躍した100アカウントを表彰する「100大UP主」を2年連続受賞するなど、中国で絶大な知名度を誇る日本人クリエイター山下智博さんに取材を依頼。メールでのインタビューを通じて、なぜ山下さんが中国で動画を撮り始めたのか、クリエイターを取り巻く状況はどんなものか、そしてなぜこのタイミングで新たな取り組みを始めたのかなど、リアルなお話を伺うことができました。

中国に移住、その後ビリビリ動画で配信を開始

--はじめに、なぜ山下さんが動画配信を始めたのか簡単に教えてください。

私が2012年に中国に移住したときは日中関係が冷え込んだ時期で、この「負の感情」の中、どれだけの創作活動できるかに興味があったんです。デモが起こるほどの状況のもと、中国で映像制作活動をスタートし、ラブドールとの数奇な同居生活を描いたドラマを自主制作し、ビリビリ動画で配信しました。

驚いたことに、作品をネットにアップすると、ネガティブな反応よりも受け入れてくれるコメントが圧倒的に多かったんです。その後、ビリビリ動画が私の動画を買い取ってくれました。その時、初めて中国で人の体温に触れた気がして、当時僕を支持してくれたネット民たちがまだ知らないような日本を伝えようと思い、いわば、恩返しの形で動画を更新する日々が始まりました。

--中国には多数の動画配信サービスがありますが、山下さんがメインで活動されているビリビリ動画とはどういったものなのでしょうか?


B.U.Gロゴ

ビリビリは当初、ニコニコ動画のファンサイトとして生まれた、ニッチな親日プラットフォームでした。弾幕(※)によるコミュニケーションでプラットフォームが盛り上がり、コンテンツの数がどんどん増えていったんです。その後しばらくマネタイズ化されなかったこともあり、作り手と見る側双方のクリエイティブや審美眼が研ぎ澄まされていきました。
※編集部注:画面を横断する流れるコメント

ナスダックに上場するなどの話題もあり、今では中国のZ世代にあたる若者が憧れるプラットフォームとなりました。近年はYouTubeのように多様化が進み、「日本」「二次元」というようなキーワードが年々薄れ、次第に中国国内のコンテンツが主流となってきています。

視聴者層に配慮したコンテンツづくりが必要

--「日本ではうけるが中国ではうけなかった」というような日中の嗜好性の違いはありますか?

正直、日本のお笑い芸人のネタの99%は理解されづらい傾向にあります。特に私が動画を作り始めた2013年頃の中国は、「シュール」な笑いのジャンルは全く受け入れられず…、一部の根強いファン以外は「意味分からない」「笑いどころどこ?」という悲しいコメントの雨あられでした。

それもそのはず、中国には「お笑い芸人」という職業が存在しません。日本で当たり前に面白いと思っていることも、いまだ盛大にスベることがあります。

中国での「笑い」は2種類に分かれます。意外性のある分かりやすいものと、隠語や専門知識などに裏打ちされた知的なものです。割合は前者が多いのですが、都会の若者であれば後者を好むなど、地域や年齢によって違いがあります。そのため、中国をひとくくりにしないよう、プラットフォームの視聴者属性などへの配慮が必要ですね。

7年向き合った結果、見えた市場の変化と個人の限界

--2020年4月に山下さんが共同代表を務める株式会社ぬるぬるは、『B.U.G』の設立を発表されました。B.U.Gとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

B.U.G (バグ)は、中国に向けたエンターテイメント文化交流をコンセプトとした「中国SNS対応型のクリエイターズネットワーク」です。日中間で活躍するクリエイターをはじめ、日本人アーティストやタレントの中国進出をサポートするプロダクション機能も持ち合わせた、ハイブリッド型のMCN(マルチチャンネルネットワーク)です。

株式会社ぬるぬるが「コンテンツ」や「プロモーション」に特化したチームであれば、B.U.Gに関しては「人」に特化したチームといえます。すでに多くのフォロワーを抱えるバイリンガルなクリエイターたちと提携しています。

--いち配信者から2019年に株式会社ぬるぬるを設立し、今回『B.U.G』を立ち上げた背景にはどういったことがあるのでしょうか。

2020年現在、日本と比較して、中国のエンターテインメント業界は急激に成長しています。ですので、映像業界で活躍するクリエイターやタレントが中国や世界へ進出していく必要に迫られている時期にきていると感じています。ですが、外国人というだけで珍しかった2012年ごろと比べると、現在は競争が激しいレッドオーシャンになりつつあり、新規参入は厳しい状況です。

同時に、私たちの気持ちとして、「日本」という大きなムーブメントを起こしていきたいというというものがあります。私が約7年ものあいだ中国の若者と向き合い、動画制作をしてきた結果、多くのフォロワーを抱えるに至りましたが、さらに大きなことを成し遂げるには「個人の力」では限界があり、それを打開するために「チーム力」が必要であると痛感しました。

そのような中で、私と同じく長年上海に住んでいた分部悠介と出会いました。彼は日本の映画やアニメなどの中国展開に携わり、弁護士・エンターテインメントロイヤーとして知財権登録や海賊版対策などの分野で活躍していた人です。日本人がクリエイターとして中国で活躍するためには、分部が得意とする法律・知財、日本への送金制度等の理解・対応が不可欠です。

私の得意とするクリエイティブ面、分部が得意とするビジネス面や法務・知財面をワンストップでサポートできる組織として、株式会社ぬるぬるを共同代表という形で日本と上海で立ち上げました。その中で、中国で活躍したいと願うクリエイターの挑戦をチームで応援していくための組織として、今回『B.U.G』を立ち上げた次第です。

ーー株式会社ぬるぬる、B.U.Gとしてのどんなプロジェクトを行ってこられたのか教えてください。


株式会社ぬるぬるの制作番組

山下個人として10年弱前から、日本、中国、欧米の様々な商品・サービスの動画領域を中心とした広告のお話をいただき、数多く対応してきましたが、最近も多くの日系企業様の中国アウトバウンド・インバウンドの広告案件を対応させてもらっております。

そのほか、我々ならではの取り組みとして、日本の「ザ!鉄腕!DASH!!」の立ち上げメンバー達と中国人の旅行番組を制作したり、北海道放送との合作で学園コントを作ったりと、プロデューサー兼タレントとして様々なコンテンツをいくつも中国でヒットさせてきました。

B.U.Gというチームが立ち上がることで、中国進出を狙う日本の芸能人の方を「コンテンツ」「SNS運用」「マネジメント」という3つの異なる角度からサポートすることが可能になりました。すでに、乃木坂46さんや日本で著名なアーティスト、タレントなどの中国展開もお手伝いさせていただいています。

ぬるぬるとの協力は、言わば「つよくてニューゲーム」

--さいごに、株式会社ぬるぬる、そしてB.U.Gの目指すべき姿、目標を教えてください。

国内ではMCN離れが見られますが、海外展開に関してはコンテンツ・運営・マネタイズなどの部分でMCNのサポートが必要不可欠です。なぜなら独自に形成された中国の各プラットフォームはパワーバランスやトレンドが常に変化しており、個人で対応することが難しいからです。

今後、中国展開を考えているクリエイターの方や企業の皆さんに、わたし山下、分部を中心に、我々チーム内で蓄積しているノウハウを惜しみなく提供し、「つよくてニューゲーム(※)」の状態で中国展開を行っていただければと考えています。
※編集部注:ゲームをクリアした後の強い状態で再度ストーリーをはじめからプレイすること

そのために多くの方にまずは、「ぬるぬる」「B.U.G」に相談しようと思っていただけるような頼れるチームを目指していきます!ギスギスした緊張状態にある関係性を「ぬるぬる」に変えていく。お互いにとって気持ちの良い交流ができるようにしていきたいですね。

山下智博さん

北海道小樽市出身。大阪芸術大学芸術計画学科卒。
中国語ゼロの状態で2012年に上海へ単身移住。
語学を学びながら13年から中国ネットで動画の配信を開始。
14年12月より配信開始した「紳士の大体一分間」が大ヒット!
以後長年に渡り中国に日本の土着文化を紹介する動画を投稿し現在中国の各プラットフォームのフォロワーは650万人を超え再生回数は12億回にのぼる唯一無二の日本人クリエイター。

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