2020/09/23 ビジネス

「データベース崩壊まで4秒」アリペイが経験した2010年「独身の日セール」のこと

いまや世界で5億人が利用するモバイル決済システム「アリペイ」。運営するのは、世界最大の非上場企業「アント・フィナンシャル」。本連載は、中国キャッシュレス社会を築きあげたフィンテック企業の公的伝記『アント・フィナンシャルの成功法則 アリペイを生み出した巨大ユニコーン企業』(発行:中信出版日本)を73回に分けてお届けします。
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 2010年11月12日0時になったところで、アント・フィナンシャルのCTO(最高技術責任者)である程立(チェンリー)はアリババ西渓園区1号ビル5階のアリペイチームの技術保障室から出て、中庭を通ってビルの5階にある「シングルズデー」総指揮室へ向かった。彼の横にはアリペイの技術保障チームの他のメンバーもいた。

 0時の時報が鳴り、彼らにとって1年でもっとも重要な1日が終わった。

 このとき、「シングルズデー」の総指揮室にはすでに喜びの波が押し寄せていた。指揮部のスクリーン前には、赤のTモールのプリントシャツを着た程立が、老苗(ラオミャオ)、玄徳(シュエンドゥー。本名=兪峰(ユーフォン))、童玲(トンリン)などの同僚とともに、ほほえみをたたえて両手を挙げ、親指と小指でシングルズデーを表すジェスチャーをしていた。彼らの後ろにある大スクリーンには、過ぎ去ったばかりのシングルズデーの成果である、912.17億元という文字が記されていた。

 程立とアリペイ技術チームにとって誇るべき時間だった。シングルズデー早朝のピーク時に、アリペイは200以上の提携先銀行とともに、毎秒8.59万件の取引の洪水を支えきったのだ。この数字は、現在世界トップの決済機関の限界値を超え、システムの安定性を測る圧力測定のときのピーク値より1万件以上も多かった。

 たった数年で、アリペイの取引件数は千万単位から一億単位になり、データ処理はPB(ペタバイト)からEB(エクサバイト)レベルへと変わり、データ処理の正確性は99.99%となった。「異地多活」(システムを複数の土地で複数のサーバーで動かし、事故のときなど速やかに対応、復元できるようにすること)スキームの決済プラットフォーム「オーシャンベース・データベース」(アリババグループが開発したデータベース名)および金融クラウドプラットフォームを、すべてシングルズデーの決済の洪水にきっちりと対応させたのである。

 程立はアリペイの技術発展の証人として、この道の厳しさがもっともよくわかっていたため、興奮し感動していた。皆が喜び祝っているこのときに、彼の気持ちは5年前へとさかのぼっていた。 

 それは、2010年のシングルズデーのことだった。

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