2020/09/18 デジタル&IT

【5G時代へ】5GがもたらすAR/VRの新体験(2)

写真:Pixabay

はじめに

今春、日本でも5Gサービスの提供が始まりました。とはいえ、接続可能エリアがごく一部に限られているため、多くの方にとってまだまだ実感が薄いかもしれません。 しかし、中国ではすでに5Gを様々な分野に活用する試みが多くなされ、この点で日本をリードしています。

このWeb連載では、中国通信技術研究の権威が、5Gの誕生、仕組み、社会への影響を解説した書籍『5G時代』(中信出版日本)の中からポイントとなる部分をピックアップしてご紹介していきます。

5GがもたらすAR/VRの新体験(2)


5GとAR/VR事業

2019年6月の統計データによると、5G のデータ通信量の25%がAR/VR で消費されている。ちなみに、4Gのデータ通信量に占めるAR/VR利用の割合はわずか2%である。この結果を見れば、5G時代のAR/VRに対し、誰もが幻想を抱くだろう。秘策ともいえる有力な5Gの事業が目の前にあるのだ。業界関係者の大半が「5GはAR/VRのために生まれた。AR/VRは5Gの最初の有力な事業だ」と非常に楽観視している。

しかし、本当にそうだろうか?新たなテクノロジーが生まれるたびに、そのターゲットとなる消費者や市場に狙いを定め、これだと期待をかける事業を明確に示してきた。これが新テクノロジーをアピールする手法で、新規事業を成長させるポイントであった。しかしながら、その思惑は往々にして思いどおりには運ばなかった。歴史はつねに繰り返すことを忘れてはならない。

3G時代、中国が普及に力を入れた期待の事業はビデオ通話だったが、結局は散々な結果に終わった。3Gネットワークの能力ではビデオ通話はもちろん、映像を見ることさえ無理があったからだ。実際に3G時代にブレイクしたのは、ミニブログサイト「ウェイボ(Weibo/微博)」である。ウェイボを起爆剤として、モバイルインターネット産業は新規事業を創出し、市場を育成して成長した。人々は今や、モバイル端末でインターネットにアクセスし、情報の取得や発信を行うことが習慣化している。また位置測位や生体認証などの基本機能の利用にも慣れてきた。

4G時代が到来し、モバイルインターネット産業の初期には新規事業が数多く登場した。勝者となる代表的な事業はなかったが、そのほとんどがモバイル決済に依存していた。通信キャリアはデータ通信のスピードを大々的にアピールし始めた。通信速度が速すぎて、気づかずにデータ通信量を大量に消費し利用料が高額になるようなことのないよう、合理的な利用をユーザーに促した。

じつは2000年前後の早い時期に、チャイナ・モバイルはモバイル決済事業を開拓しようと目論んだことがある。当時の中国の通信業界は最盛期を迎え、中国全体の経済構造の中で急成長をしていた。しかし、モバイル決済の権限付与をめぐって銀行と交渉を重ねるものの、事業を推し進めるのはやはり困難だった。ネックとなる業界間の壁は、時間をかけて適切な手段で取り払わねばならない。業界の体制、市場、テクノロジーなどの各種要素から、交渉が進まないボトルネックを分析する必要があるのだ。最終的には、決済事業の体制外にいた「アリペイ(Alipay/支付宝)」がモバイルインターネットテクノロジーを利用してモバイル決済事業を手中に収めた。体制内にいる通信産業と銀行が実現できなかった偉業を成し遂げた。

今になってわかるのは、4G時代でモバイルインターネット事業の基礎が構築され、ユーザーを事業のシステムに適応させたということだ。

その後、ショート動画がブームとなり、4G時代ならではの有力な新規事業となった。TikTok(抖音短視頻/ドウイントウアンシーピン)に代表されるショート動画が4Gの主力事業になったのは、大量のユーザーが一気に利用し始めたことだけが理由ではない。人間の特性をしっかり把握することで、ユーザーが興味のあるテーマを積極的に配信し、彼らを中毒にさせ、そこに開発者たちがビジネスチャンスを見出したことが大きな要因だ。

メディア形式で発展の順に並べてみると、ショートメッセージ、ウェイボ、画像、動画の次にはAR/VRが来て、5G時代はAR/VRの天下になるはずだ。韓国の5G商用に関連するデータもそれを証明している。しかし、本当にそうなのだろうか?

もうひとつ考慮すべき重要な要素がある。それは地域によって人々の使用習慣が異なる点だ。ショートメッセージはモバイルネットワークのシグナリングの一機能にすぎず、当初は事業化は想定されていなかった。しかし、中国では大多数の人々がショートメッセージを利用し、「短信段子手/トウアンシントウアンズシヨウ」と呼ばれるショートメッセージでストーリーやジョークを配信するプロの書き手も登場した。毎年大晦日の夜には、大量のショートメッセージの送受信でサーバーダウンが起こらないかと、通信キャリアを心配させるほどになった。その一方、欧米ではショートメッセージがそれほど流行しなかった。地域によって文化が異なり、同じテクノロジーを目の前にしても、利用するかしないかの選択は人それぞれであるということがわかるだろう。

そのため、韓国では5G の応用シーンとしてAR / VR がブームになったとしても、中国でもブームになるとは限らないのである。

次回は、「クラウドゲームの商用化」
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