2020/10/07 デジタル&IT

【5G時代へ】エッジコンピューティングが加速させる5G

写真:Pixabay

はじめに


今春、日本でも5Gサービスの提供が始まりました。とはいえ、接続可能エリアがごく一部に限られているため、多くの方にとってまだまだ実感が薄いかもしれません。 しかし、中国ではすでに5Gを様々な分野に活用する試みが多くなされ、この点で日本をリードしています。

このWeb連載では、中国通信技術研究の権威が、5Gの誕生、仕組み、社会への影響を解説した書籍『5G時代』(中信出版日本)の中からポイントとなる部分をピックアップしてご紹介していきます。



「クラウド」から「エッジ」へ


モバイルエッジコンピューティング(Mobile Edge Computing/MEC)という概念は、2013年、IBMとノキア・シーメンス・ネットワークス(Nokia Siemens Networks)が共同で発表したコンピューティングプラットフォームで提起された。

2014年、欧州電気通信標準化協会は、モバイルエッジコンピューティングの規範化グループを発足させ、標準化に関する作業を開始した。モバイルエッジコンピューティングに対し、「モバイルネットワークのエッジで、ITサービスの環境とクラウドコンピューティング(Cloud Computing)の技術を提供する」と定義している。ちなみに「エッジ」とは、端や縁を意味し、利用者の端末や端末側のネットワークで収集したデータを送り出すポイントを指す。

2016年、ファーウェイが提唱し、数多くの企業と共同で「エッジコンピューティング産業連盟」を設立した。そのモバイルエッジコンピューティングの定義は、「モノやデータソースに近いネットワークのエッジ側で、ネットワーク、計算、記憶(内蔵)、応用のコア能力を融合したオープンプラットフォーム」である。データ接続、リアルタイム業務、データ最適化、アプリケーションインテリジェンス、セキュリティとプライバシー保護などの面における業界のデジタル化の核心的ニーズを満たすため、エッジインテリジェンスサービスを提供する。

これに類似したテクノロジーに「フォグコンピューティング(Fog Computing)」がある。これはシスコシステムズ(Cisco Systems)が2012年に提示した概念で、クラウドコンピューティングの拡張の一種だ。端末機器からクラウドまでをカバーする連続したアーキテクチャで、IoTの遅延と帯域幅に関するソリューションに用いられた。

モバイルエッジコンピューティングとフォグコンピューティングは最初の厳密な定義からして異なる。モバイルエッジコンピューティングは、ネットワークエッジのノードにだけ機能し、一方、フォグコンピューティングはそれ以外のユーザー端末のリソースも含む。しかし、2つの概念が広まるにつれて、両者の違いは次第に小さくなった。

エッジコンピューティングは計算が集中するデータセンターを、ユビキタスコンピューティングに向けて一歩前進させた。5G の強大なネットワーク能力のおかげで、データ伝送はもはやボトルネックではなくなった。しかし、計算が間に合わない。大量のデータが端末とクラウドの間を絶えず行き来し、クラウドだけに頼って計算をすると、全体的な遅延が大きくなる。

ユビキタスコンピューティング=コンピュータの所在を意識することなく、いつでもどこでも誰でもコンピュータを使える情報環境を表す概念。

そこで、シスコシステムズは、フォグコンピューティングを提起し、欧州電気通信標準化協会はモバイルエッジコンピューティングを提起した。いずれも計算機能を単一クラウドへの集中からユーザー側へ分散させることで、「応答時間の短縮」「全体的な計算コストの低減」「システム性能の向上」を期待した。

「SDN(ソフトウェア定義型ネットワーク)」「NFV(ネットワーク機能仮想化)」のテクノロジーの利用、「eMBB(高速大容量通信)」「mMTC(多数同時接続)」「uRLLC(高信頼低遅延通信)」の3大特徴の実施、モバイルエッジコンピューティングの実現により、5Gという巨大なテクノロジーは、よりスマートになり、あまねく存在するようになった。

エッジコンピューティングは「高性能」「低消費電力」「低遅延」「広帯域」といった電気通信レベルのネットワーク環境の創造を可能にした。しかも、都市・町・地区レベルの小型データセンターにまで展開し、クラウドゲームのような今すぐ低遅延を必要とする応用ケースを解決する。

通信キャリアもまた、エッジコンピューティングによって事業範囲を拡大し、単一の伝送通信路に限定されず、低遅延の特殊なクラウドサービスを提供できる。

ネットワークを仮想化するため、5GはアクセスネットワークにC-RAN(クラウド無線アクセスネットワーク)を採用し、基地局の制御ユニットをベースバンドプールに配置すれば、ベースバンドプールは天然の小型データセンターになる。この小型データセンターは、基地局のサービス範囲内のユーザーに対し、計算や記憶に必要なキャッシュメモリを提供する能力をもつ。

エッジコンピューティングは、ここ数年で急速に発展したテクノロジーである。聡明な頭脳と(AI)と幅広い道路(5G)を手に入れた後、マイカー(ユーザー端末)をどのように運転し、性能をより発揮させるか……、それが、情報ネットワーク端末のユーザーたちが求めるところだ。

エッジコンピューティングは、大量記憶、処理能力、スマートアルゴリズムをユーザー側へ移行することで、ネットワーク遅延を大幅に低減するだけでなく、データセンターの煩雑なタスクを分担する。それにより、5Gのブロードバンドと先進的アルゴリズムがもたらす「知能(インテリジェンス)」を、ユーザー端末に提供するのである。

エッジコンピューティングは、5Gの中で非常によく利用され、さまざまなビジネスシーンに順応している。「記憶」「処理」「知能」などの多種類の機能を統一することで、エッジコンピューティングノードは個々に分散された「知能記憶処理ノード」になる。これは、エッジコンピューティング対応の機器メーカーに大きな市場をもたらした。


次回は、「進化するブロックチェーン」

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