2021/03/27 エンタメ

中国映画『迫り来る嵐』実力派俳優ドアン・イーホンが“捜査”にのめり込んでいく男を熱演

(C) 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited

1990年代後半、香港返還が近付き経済発展に向けて激動の時代を迎えた中国。今回ご紹介するのは、そんな激しい時代の流れに置き去りにされ、とある事件の“捜査”に執着していく男を描いたサスペンス映画『迫り来る嵐』です。

【画像】雨のシーンが印象的なサスペンス映画『迫り来る嵐』

本作は第30回東京国際映画祭で上映され、最優秀芸術貢献賞と最優秀男優賞を獲得するという高評価を得ました。主演の段奕宏(ドアン・イーホン)は、インド国際映画祭、上海国際映画祭に続き、3度目の最優秀男優賞に輝き実力派俳優として国際的に認められています。

※本記事は一部ネタバレを含みます

刑事を気取った悲しい男の運命

1997年、とある小さな町で連続女性殺人事件が起こります。主人公は、ドアン・イーホン演じる町の国営製鋼所で警備員を務める余国偉(ユィ・グオウェイ)。

工場の警備員であるユィですが、事件を捜査する刑事に付きまとい、勝手に独自捜査を始めます。本物の刑事たちは呆れつつもユィに情報を流したり、ユィ自身も同僚たちから”探偵”ともてはやされるうちに、調子に乗っていってしまいます。

容疑者らしき男を工場で見つけ、追いかけるも部下を死に追いやってしまうほか、被害者が自分の恋人・燕子(イェンズ)に似ていることを知り恋人を「おとり」に犯人を捕まえようとするなど、事件捜査に執着するユィは衝撃的な行動に出てしまうのです。

劇中降り続く雨に感じる閉塞感

『迫り来る嵐』では、劇中終始冷たく激しい雨が降り続いています。登場人物たちは雨合羽を着ており、暗鬱とした雰囲気が全編に渡ってただよっています。経済発展を迎える社会に取り残されていく一般市民の閉塞感を表現しているかのような雨。降りしきる大雨の中、“捜査”にのめり込んでいくユィからは、そんな悲しみを感じるのです。

私が本作を鑑賞した時、とても印象的だった場面を1つご紹介します。

ユィが工場の模範工員として表彰されるシーン。そこで「偽物の雪」が降ります。物語の最後に、ユィはその年の表彰はなかったという現実を知ることになります。つまり「偽物の雪」は、「表彰」が虚しい妄想だったという悲しい事実を暗示していたというわけです。そして、閉鎖され爆破されてなくなる工場を見つめるユィの姿からは、激動の時代を生きた人々の苦悩が見えるようです。

監督が描きたかったもの

董越(ドン・ユエ)監督は驚くべきことに、本作が長編映画デビューです。そんな記念すべき処女作に『迫り来る嵐』を選んだ理由を「中国にとって90年末代は非常に重要で特別な時代であり、経済のメカニズムが変化していく中、その変化に一般市民がどう向き合ったかに着目したかった」のだと東京国際映画祭の舞台挨拶で語っていました。

激しく変化する中国社会の描写こそが『迫り来る嵐』の本当の見どころであり、その点を念頭に置いて鑑賞すると、より深く作品を理解し、楽しむことができるはずです。

迫り来る嵐
(C) 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited

迫り来る嵐
原題:暴雪将至
監督:ドン・ユエ
出演:ドアン・イーホン、ジャン・イーイェン、トゥ・ユアン、チェン・ウェイ
上映時間:119分
DVD価格:4,180円(税込)
(C) 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited
発売元:アット エンタテインメント
販売元:TCエンタテインメント

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