2021/05/01 エンタメ

2015年映画『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』のヒット要因とは?中国アニメ躍進のいま振り返る

©2015 October Animation Studio,HG Entertainment

アジアで初めての長編アニメをつくったのは、実は中国だったというのはご存じでしょうか。1942年に日本でも公開された『西遊記 鉄扇公主の巻』がそれで、制作の中心となった万兄弟はあの手塚治虫にとってのあこがれの人だった、という逸話があります。以来、中国では何度となく「西遊記」のアニメ化がされてきました。

【画像7点】これまでになかったスタイリッシュな孫悟空

近年みられる新たな西遊記ブーム

実は近年、中国アニメ界では新たな「西遊記」ブームが起きています。日本でも2021年2月に公開された『ナタ転生』には孫悟空が登場しましたし、同年4月に中国で公開された3Dアニメ『西遊記之再世妖王(原題)』は興行収入1億元(約16.5億円)を突破しています。そしてこのブームの発端の一つとなったのが2015年当時、中国国産アニメの興行収入第1位を獲得した『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』(以下『ヒーロー・イズ・バック』)だったのです。

ヒーローの再解釈で描かれた孫悟空の「人間臭さ」

ところがこの作品、いわゆる「西遊記」のお約束的なものを期待すると、観客は裏切られることになります。主要人物の一人は出てきませんし、三蔵法師の役割は全く違うキャラクターに換骨奪胎されています。なにより主役の孫悟空からして、最初と最後を除いて自信を失った「ただの猿」としてストーリーが進行していきます。そして、それこそがこの映画のヒットの理由の一つだと思われるのです。

2000年ごろから、バットマンやスーパーマン、スパイダーマンなどのヒーローを再解釈した「リブート作品」がよく見受けられるようになりました。それらの作品では、ヒーローは「ピンチの時にはどこからともなく現れ、さっと解決してまた去っていく誰か」ではなく、時に悩み、時につまずく、非常に人間臭い存在として描かれています。そしてその描写はヒーローたちに新たな魅力を与え、新規ファンの掘り起こしにつながったのです。

これと同じ図式が『ヒーロー・イズ・バック』に当てはまるのではないでしょうか。誰もが知っているキャラクターとその世界観を使って、映画をどのように“今日”の観客に対して魅力的に作るか。この課題に、本作の田暁鵬(ティエン・シャオポン)監督は大胆なアレンジを加えることで、孫悟空を物語の中で精神的な成長を遂げる感情移入しやすい主人公に仕立てることに成功しました。その成長が描かれるからこそ、作品に深みが生まれ、ラストのクライマックスでは観客は大きなカタルシスを得ることができるのです。

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