朝晩が涼しくなるころ、葉の付け根から緑色の小さな突起が顔を出すことがあります。
花芽なのか根なのか、咲くまでどれくらいかかるのか、毎朝のぞき込んでしまう方も多いと思います。
元技術者の田中光男です。
この記事では、花芽を見つけた日から花が咲くまでの流れを、私の記録ノートと洋蘭園の情報をもとにお話しします。
目安は花芽を確認してから2か月半〜3か月半で、その間に気を配るのは温度と支柱を立てる時期です。
花芽か根か、まずは見分けるところから
葉のあいだから出てきた突起を見て「花芽だ」と喜んだら、実は根だった。
胡蝶蘭を育てる人なら一度は通る道で、私も最初の年に同じ勘違いをしています。
胡蝶蘭はもともと木の幹に張りついて暮らす植物なので、根が横や上に向かって伸びることがあり、出はじめの姿が花芽とよく似ているんです。
出てくる場所で見当をつける
花芽が出てくる位置は、ある程度決まっています。
茨城県のカシマ洋ラン園の花芽と根の見分け方の解説によると、花芽は上から数えて3枚目と4枚目の葉のあいだから出てくるそうです。
根のほうは、株元や葉の付け根など、わりとどこからでも出てきます。
上から3〜4枚目の葉のわきなら花芽の見込みが高く、株元に近い低い位置なら根を疑う、というのが私の見当のつけ方です。
ただ、わが家では花芽が出そうな位置から根が伸びてきたこともあったので、場所だけで決めつけず、次の色の変化もあわせて確かめています。
先端の色と伸びる向きで確かめる
決め手になるのは先端の色です。
根は最初こそ花芽と同じ緑色ですが、伸びるにつれて全体が白っぽくなり、先端が茶色くなってきます。
花芽のほうは、伸びても緑色のままです。
カシマ洋ラン園では、根なら10〜15cmほど伸びたころには先端が茶色くなるので、そこで判別できると説明しています。
出はじめの数cmで慌てて決めず、1〜2週間ほど様子を見るのが確実です。
私は技術者のくせで、怪しい突起を見つけたらそばに日付を書いたラベルを差し、毎週の長さと色をノートにつけています。
| 見るところ | 花芽 | 根 |
|---|---|---|
| 出てくる位置 | 上から3〜4枚目の葉のあいだ | 株元や葉の付け根など、いろいろな場所 |
| 色の変化 | 伸びても緑色のまま | 緑から白っぽくなり、先端が茶色くなる |
| 伸びる向き | 光のほうへ立ち上がっていく | 横や下、ときには上にも伸びる |
| 出てくる数 | 根よりずっと少ない | 花芽より多く出る |
花芽が出てから咲くまでの日数
花芽の確認から開花までは2か月半〜3か月半
園芸研究家の富山昌克さんが監修したKINCHO園芸のファレノプシスの育て方では、18℃の環境で花芽を確認してから、たいていの品種は2か月半〜3か月半で咲くと紹介されています。
同じページによると、大輪系は18℃の環境に移してから早いもので30〜40日で花芽が確認でき、ミディタイプは約20日と反応が早いそうです。
花芽ができるきっかけは、気温が下がることです。
農研機構の研究成果でも、生産の現場では25℃以上の高温によって花茎の発生を抑える方法が使われてきたと書かれています。
裏を返せば、暑い部屋に置いたままでは花芽は出にくく、秋に気温が下がってからが本番ということです。
花芽をつけるための冬の温度管理は、以前書いた胡蝶蘭の冬越しガイドも参考にしてください。
わが家の記録ノートから
昨シーズン、居間(夜はだいたい18〜20℃)で育てた白の大輪の記録を載せておきます。
10月28日の朝、水やりのときにこの突起を見つけて、思わず「出てきたばい」と声が出ました。
| 出来事 | 日付 | 花芽を見つけてからの日数 |
|---|---|---|
| 葉のあいだに緑の突起を見つける | 10月28日 | 0日 |
| 先端が緑のままなので花芽と判断 | 11月11日 | 14日 |
| 花茎が12cmになり支柱を立てる | 11月26日 | 29日 |
| 花茎の先に蕾が見えはじめる | 12月下旬 | 約60日 |
| いちばん下の蕾が開く | 2月4日 | 99日 |
| 先端の蕾まで咲きそろう | 2月23日 | 118日 |
いちばん下の花が開くまで99日で、3か月と少しかかりました。
富山さんの示す目安の範囲に収まっていて、ノートを見返しながら少しほっとしたものです。
株や品種、部屋の温度によって日数は前後するので、一つの例として見てください。
冬に伸びが止まって見えるとき
12月から1月にかけて、花茎の伸びがぴたりと止まったように見える時期があります。
気温が低いと成長がゆっくりになるためで、枯れたわけではありません。
生きているかどうかは、花茎の先端を見ればわかります。
先端が緑色でつやがあれば、暖かくなるのを待っているだけです。
先端が黄色や茶色に変わってしぼんできたら、その花茎の伸びはそこで止まったと考えて、株を休ませる方向に切りかえています。
KINCHO園芸のページでは、花茎を早く伸ばしたいときは22〜25℃で管理するとあります。
ただし同じページに、1日の温度変化がないと花の数が減り、ひどいときは10輪つくはずが5輪しかつかないとも書かれていました。
暖房で一日中同じ温度に保てばよいわけではなく、昼は暖かく、夜は少し下がるくらいの差を残しておくほうが、私の経験でも花数が安定します。
花茎を伸ばす時期の管理
置き場所を決めたら動かさない
花茎は光の差すほうへ向かって伸びていきます。
鉢の向きをたびたび変えると、花茎がそのたびに向きを変えようとして、くねくねと曲がってしまいます。
わが家では花芽を見つけた時点で置き場所を決め、鉢のふちに油性ペンで正面の印をつけています。
水やりで持ち上げても、戻すときに印を窓側に向ければ向きが狂いません。
冬の夜に窓際が冷える部屋なら、はじめからレースカーテン越しの光が届く、窓から少し離れた場所を選んでおくと、夜ごとに動かさずに済みます。
水やりと肥料はいつもどおりで十分
花芽が出たからといって、水を増やす必要はありません。
植え込み材がしっかり乾いてから与えるという、普段どおりのやり方を続けます。
冬場は乾くまでに日数がかかるので、カレンダーで決めずに、鉢の重さや指で触った感触で判断してください。
肥料について、カシマ洋ラン園では花芽がついたら洋ラン用の液体肥料を薄めて与えるとしています。
私は表示よりもさらに薄めたものを、暖かい日の水やりのときに与える程度にしています。
与えすぎるとかえって株を弱らせるので、使用方法は必ず確認してください。
支柱立ては花茎10〜15cmが合図
早すぎても遅すぎてもうまくいかない
支柱を立てるタイミングは、花茎の長さで判断します。
山梨県の松村洋蘭が紹介している支柱たてのポイントでは、目安は花茎10〜15cmです。
短すぎると支柱に沿わせられず、長すぎると花茎が堅くなり、無理に動かしたときに折れてしまうことがあるそうです。
私も一度、30cm近くまで放っておいた花茎を支柱に寄せようとして、根元近くでぽきりと折ってしまいました。
あのときは美智子にずいぶん慰められたものです。
それ以来、花茎が10cmを超えたら、すぐに支柱の準備をするようにしています。
すでに長く伸びてしまった花茎は、まっすぐに直そうとしないことです。
私は今の花茎の角度に合わせて支柱を少し斜めに差し、先のほうを1か所ゆるく留めるだけにしています。
姿は多少くずれても、花はちゃんと咲いてくれます。
支柱の立て方と留め方
支柱は、買ったときに胡蝶蘭についていたものを再利用するのが間違いがないそうです。
立て方の手順は次のとおりです。
- 花茎を垂れさせたい方向の背面に支柱を差し込む
- 力を入れずにすっと入る場所を選び、根を傷つけない
- 花茎の節に重ならない位置を、クリップなどでゆるめに留める
- 花茎が伸びてきたら、少し上をもう1か所留める
きつく縛ると花茎が太るときに食いこむので、指が1本入るくらいのゆとりを残しておくと安心です。
蕾が見えてきたら留めるのはおしまい
花茎の先に蕾が見えはじめたら、そこから先は支柱に留めません。
蕾がついた部分は光のほうへ自然にしなって伸び、胡蝶蘭らしい弓なりの姿になります。
ここで無理に向きを直そうとすると、蕾に負担がかかって落ちる原因になります。
蕾がついてから咲くまで
蕾は下から順に一輪ずつ開く
蕾は花茎の根元に近いほうから、先端に向かって順番に開いていきます。
フラワースミスギフトの胡蝶蘭の蕾が咲くまでの日数と管理のコツでは、蕾がふくらんでから開くまでは1輪あたり約3〜7日が目安で、気温が低い時期は遅くなると紹介されています。
私の記録ノートでも、いちばん下が開いてから先端まで咲きそろうのに19日かかりました。
蕾の成長段階の見分け方や季節ごとの注意点もまとまっているので、蕾が見えてきた段階で一度目を通しておくと、開くのを待つあいだも落ち着いていられます。
蕾を落とさないために気をつけること
3か月近く待ってきて、最後の最後で蕾が落ちるのはつらいものです。
私の失敗と、先ほどの記事で挙げられている原因を合わせると、気をつけたいのは次のような点です。
- 夜の窓際の冷え込みなど、急な温度変化
- 直射日光による蕾の傷み
- 植え込み材が湿っているうちの水やり
- 蕾のついた花茎に触ったり、鉢の向きを変えたりすること
私がやってしまったのは最後の一つでした。
咲きかけの蕾を孫に見せようと、鉢をくるりと回して正面を変えたことがあります。
翌週、先端の小さな蕾が2つ黄色くなって落ち、それからは見せたいときは孫のほうに回りこんでもらうことにしました。
まとめ
花芽は上から3〜4枚目の葉のあいだから出て、伸びても緑色のままなのが根との違いです。
見つけてから咲くまでは2か月半〜3か月半が目安で、わが家の記録では最初の花が開くまで99日かかりました。
その間にやることは、実はそれほど多くありません。
置き場所を決めて動かさず、昼と夜の温度差を少し残し、花茎が10〜15cmになったら支柱を立てます。
蕾が見えてきたら、あとは触らずに見守るだけです。
待つ時間は長いのですが、ノートに日付を書きこんでいくと、花茎が数cmずつ伸びていくのが目に見えてわかり、それ自体が楽しみになります。
今年の秋、あなたの胡蝶蘭に花芽を見つけたら、まずは日付をメモするところから始めてみてください。